2017年9月21日木曜日

フリダスの牛争い/Tain bo Flidais

「クラン・ルズラゲ」Clanna Rudhraighe
ルズラゲの一族。アルスターの有力氏族である。エリンの中でも最も勇猛な三つの部族の一つ。フェルグスやコンホヴァル王、勝利のコナルやクーフーリンなどが属する。

「トゥアハー・タジィン」Tuatha Taiden(Taidiu)
水の国という意味だろう。タジィウ族とも。コノートの三大部族の一つ。

「ガウァンラズ」
おそらく牛の部族という意味のコノートの三大部族の一つ。エリン北部でクラン・ルズラゲに匹敵する勇猛さで知られる。
ガウァンラズは部族全体を指す複数形で、ガウァンは部族内の個人を指す。

「クルアハン」
コノートの都。

「エウィン」
エウィン・ウァハ(エウィン・マハなど)といい、アルスターの都。

「タラ」
エリン上王の玉座がある都。祭儀などが行われた。

「エリス」
語源はイアル・ロス=西の岬。コノート北西部の突き出た半島。

「ウラズ」
アルスターの語源となった、アルスター地方に在住した部族。他に有力なアルスターの部族としてクルスニがいる。

「クラン・デザ」(Clann Degad)
デザ・マクセンの一族。エリンで最も勇猛な三つの部族の一つ。デザの子ティゲルナハはメイヴの軍勢に加わっている。この一族にはクー・フーリンと戦ったクー・ロイ・マクダーリやエタースケルなどがいる。
また、後にはコルク・ロイグデと呼ばれる一族はクラン・デザと同じとみなしていいだろう。

「ドゥブロンガス」(Dubloinges)
黒い亡命の意味で、フェルグスとともにコナハトに亡命した一団のこと。

「オラヴ」
最高位の詩人。
この物語で特に個人のオラヴを指す場合はたいていブリクリウのこと。

「クライブルアズ」(Craobruadh)
いわゆる赤枝の騎士団。

「コンの半分」(Leth Conn)
7、8世紀以降にコンの子孫、コノート系の王族が北部の主要部を抑えて繁栄したためにアイルランド北部をコンの半分と呼ぶ。一方、南部はムグの半分と呼ばれ、マンスターの王族集団エオガナハトが栄えた。神話においてもエリンを南北に二分する主張は随所に見られる。

「ブレホン」
慣習法によって争いごとなどを調停する裁判官のような存在。
アイルランドの伝統的な知識階級の一つ。


※※※ 文中の――については原文の抜けが激しいなど英訳されていない部分、(?)は英訳通りに、( )については自らの補足としている。

※※※ Glenmasan MS.の一部、フリダスについての物語のみ。62段落から200段落までで、邦訳するにあたっては段落分けしない。



ある夜、アリルとメイヴそしてトゥアハー・タジィンにより盛大な宴が催された。
そしてクルアハンの宮殿が彼らによってしつらえられた。この宮殿の装いはフェルグスが彼らの身内にやってきたからだった。
メイヴが玉座に第一位に座った。そしてフェルグスは彼女の右手に座した。コルマク・コンロンガスは彼の隣に、そしてドゥブトンガスはコルマクの座から順に座った。
アリルはケヒトの息子を左に従えてメイヴの左手に座り、コノートの貴族たちがコノザー(マクケフト)に入り口の柱まで続いた。ケトは勇士の席に、フェルディアは彼の前の他の寝椅子に、そして彼らの後ろから玉座へとガウァンラズが続いて座った。
フィダハの息子フロイフは七人のマネを周りに王の長椅子に座った。そしてここからフィダハの息子たちが座る長椅子へは、リーアの赤いガウァン、そして腱脚のガウァン、三十人もの剛力のガウァン、四十の攻撃的なガウァン、六十の剣戟の鋭いガウァン、九十の致命傷を与えるガウァン、シドガルのしなやかなガウァン。
彼らの前の長いすの背にエオハズ・ロンとダル・ドルイネとケヒトの息子の家族は座った。
ブリクリウの一団のオラヴ、つまりネーデ、ルガズ、フェルバイス、ドルイドのディアングス、フェルフー・エフタハ、ロッホ・キーのリンスアハ、は彼を取り巻いてメイヴの寝所の席に座った。前の席には短衣の人々、ブレフナのベルカと彼の七人の息子、ニアズルの息子ネラ、それに彼の兄ドゥングスと彼の家族もともにいた。
アリルの娘フィンナヴァルと彼の五十人の乙女は諸侯の面前、エリンの注目を浴びて中央の金色の箔が施された長方形の仕切り部屋に座った。
アリルとメイヴの宮殿はこのような装いだった。

この席次で装い、席をしつらえられて一同は飲み、陽気になって、とうとう首領たちが酔いどれ出来上がって騒いだものだった。それからフェルグスとブリクリウはこの心地よい会話や明るい談話に加わった。
「あなたは覚えていらっしゃいますでしょうか、親愛なるフェルグスよ」とブリクリウは切り出した。
「あなたがアルスターを去る時にあなたの民に約束した配給、つまり六十輌の戦車と盾、武器、そして馬のことを。それに以前の毎年だったことのようにあなたは家庭の女どもにも三百の赤金のイルナ(語義不詳)もまた約束なさった。」
「彼らにそのようにしてやれぬのだ、ブリクリウよ」とフェルグスは口にした。
「そして、それを得ることもどのようにしてよいかわからぬ、というのも我らはすでにこの地方に大いに重荷となっているのだ。我らの多大な家族と、我らが君主、貴族、指導者に族長や諸侯や若者、女性たちの数が膨大であるがゆえに、者どもに差配することは困難である。
そして他の四つの地方ではここほど我らを養ってくれないだろうし、実際にわれらは必要なものすべてをまかなえるように彼らに頼むのもできないのだ」

「それはまことに気の毒なことですな、フェルグスよ」とブリクリウは言った。
「わたしはあなたが人々に手当を支払えないことに困っておるのです。そしてあなたがコノートに来てしまってから、あなたが善しとするものすべてがメイヴの宝飾品の贈り物のため、彼女の言いなりになっているように思えています」

    まことに気の毒なことよ、エウィンのフェルグスよ
    あなたの気高い精神の鋭さはなまってしまった
    メイヴの悦楽、武勇の誉れ、彼女の配給の見返りに

    あなたは勇ましい言葉を発する
    あなたはの軍勢は一年を過ごすべきではない、と
    二十掛ける三輌の立派な戦車もなしに
    そして武器や多くの盾も

    あなたの家族の女性は
    数が多いといえども、祝宴の屋敷に
    三百の赤金のイルナもなしにいるべきではない、と

    あなたの手には今夜なにもない
    あなたの友が、まったく都合の悪いことに、受けとることができるものは
    あなたは全く資産をもたず
    これ以上ないほど哀れな状態だ

    ああ、気の毒に

フェルグスはブリクリウのこの物言いに激怒した。このような調子で夜は明けて、朝になった。それからブリクリウは立ち上がって五十掛ける三の弟子を引き連れてメイヴのもとに相談に行った。
「そなたの望みはなにかしら、オラヴよ」とメイヴは聞いた。
「私は行きたいのですよ」とブリクリウは答えた。「ガウァンラズの貴族たちに贈り物を求めに」

「許可いたしましょう」とメイヴは言った。「そこであなたはエリンで最高の精神と寛容さと名誉をもつ貴族を見ることでしょう」
ブリクリウは芝生に出て行って、フェルグスと落ち合った。
「なにごとか、オラヴよ」とフェルグスは尋ねた。
「わたしはあなたの人々に約束した報酬を求めに行きたいのです」
「わしもそなたがその探求に行くことに大いに賛成するぞ」とフェルグスは述べた。

ブリクリウはクルアハンから西に進んだが、これが彼と一行の旅した道程である。
つまり今やキンフェラズの砦と呼ばれるフィン・ケイムの砦を去ると、今やベーラ・コイレと呼ばれるベーラ・フォスラスを越え、クリク・アルテハと呼ばれるクリク・クイルク(コークの土地)を越え、スリーヴ・ルーガと呼ばれるスリーヴ・ファルグシン(見晴らしの丘)を越え、今や西部コランの地と呼ばれるフィルターの息子ルグナの領地の西部を抜け、クリク・ガレン(レンスター)と呼ばれるコルバ・クリク・ケイン(遠い地の柱)を過ぎ、モイのメルブルインと呼ばれるサル・スローハ・ジャルグ(赤い流れの踵)を過ぎ、ロッホ・コンとロッホ・クリンの近く、そしてドナルド・ドゥアルブゼの息子アリル・フィンの住まうドゥン・アーハ・フェンへ向かった。

彼らが緑地に到着すると、美しく目立つ一行は人目を引き、その消息をすぐさま尋ねられた。
そして彼らはこれこそコノート、クルアハンひいては全エリンのオラヴであるケアブリの息子ブリクリウだと語った。これを聞いて見物人や女性や男性、若者とアリル・フィンとその家族は我先にとブリクリウと一行を歓迎するために進み出た。
そしてブリクリウは兵士や戦士の肩に乗せられて宿でアリル・フィンの前に運ばれた。アリルとその場にいた貴族たちは彼に会うために立ち上がった。
そして彼らは彼に三度の接吻をし、彼はアリル・フィンの横に座った。また、彼らはクルアハンのアリルとメイヴとフェルグスの消息を尋ねた。ブリクリウはこれらすべてのことを伝えた。
その夜、ブリクリウの人々のために寝室が用意され、希少な酒や最高級の食べ物が給仕された。その後に王の自身の屋敷はしつらえられたのだった。そしてガウァンラズの貴族たちが案内されてきてその身分と立場に応じてふさわしい場所に座った。そしてこれらがアリル・フィンのいつもの屋敷の人間であるが、それらの一部にはクルアハンのアリルとメイヴの屋敷で既に挙げられたものもいた。つまり百人のフェルディアを引き連れた偉大で勇敢な戦士、ダーリの息子ダマンの子、フェルディア。三百のフロイフを引き連れたフィダハの息子フロイフ。
ゴル・オレフとゴル・アクラと三百人のゴル。七百のブレスレンと七人のブレフナのブレスレンたち。フェルジャルグの息子ドラーと同じ名前の三百の勇士たち。シドガルのガウァンと三百のガウァンたち。ガウァンの息子デュバンと三百のデュバンたち。そしてディベルグのダアタと三百人のダアタたち。そして他と同じ数の異なる名の者たちがいたと言うものもいた。

その夜、このように祝宴の広間はアリルによって整えられしつらえられた。使者がブリクリウへと送られ、名誉と尊厳をもって彼は会場に案内された。彼はアリル・フィンの隣に座り、彼の詩人たちは反対側に置かれた。
そしてあらゆる新鮮な食品や熟した酒が会場へと持ち運ばれた。そこでは、公に白ワイン、貴族にとても古く輝く蜂蜜酒、歓待側の者にはブラゲット(エールに蜂蜜や香辛料を加えた酒類)、全ての人や雑人にはエールを、そのように供された。
貴族と勇士たちは食べ、飲み飽かす頃には戦士たちは酒の力によって大いに発奮した。
彼らはガウァンラズの王ドナルド・ドゥアルブゼの息子アリル・フィンに敬意を表した歌か物語か詩がないかとブリクリウに求めた。
ブリクリウは、あるが少し待っていただきたいと答えた。しかしガウァンラズはブリクリウから聴こうとせっかちであり、二度三度と彼らは呼んだのだった。
それから物事はやや落ち着いた。
ブリクリウは九本の弦の琴を持ってくるように随行者に求めた。彼らは彼の席の隅の、彼のそばの赤金の台座の上に琴を置いた、
ブリクリウはそれを取って、彼の合唱隊を伴い、ドナルド・ドゥアルブゼの息子アリル・フィンを賞賛(cepog:語義について脚注あり)して彼が作った歌を披露した。そして以下の歌だった。

    わたしは高名な君主、アリルに求める
    彼の土地からわれらにそれぞれ三頭の馬、
    活きが良い馬と一輌の戦車こそ
    われらが純粋な歓待に望んだ。

    五十振りの剣を我らに下さるだろうし
    五十着の白いチュニック――
    一振りの剣――
    我らがその偉大さを認識する王より。

    わたしは同様のものを彼の多くの戦士たちに望む、
    彼の目を見よ、広大な彼の地、
    大いなる海の辺での人々への殺戮、
    強大な者どもに対する彼らの憤激は凄惨だ。

    わたしは求める。

    わたしはドナルド・ダルの息子に求める、
    エリスの皇帝、彼の称号、
    その勇気は偉大で気高い高貴なる兵士、
    怒りの闘争に対する柱よ


ガウァンラズはみなでその歌を賞賛した。彼らはより良い歌など聞いたことがないといった。
「しかし一つ、我らはこの歌に欠点を見つけた」とガウァンラズは言った。
「我らにはそれがわからぬ」 「わたしが説明いたしましょう」とブリクリウは述べた。

    Ailim Ailill, amra an triath
    Bid am tre each as a iath

その意味は(アリルは)わたしと共に来た者にそれぞれ三頭の馬、三頭の馬につき一輌の白銅の戦車、戦車一輌につき二本の槍をそしてエリンで最も優れた剣の三、いや二振りのうちの一つであるから、ガウァンラズの王にして彼の父であるドナルド・ドゥアルブゼの立派に装飾された剣のような五十振りの剣をわたしにくださるということです。

    Ailim lin a leithid luiscc

これは、私はアリルと彼の大勢の英雄たちに求めるということです。

    Re rompa ruisg, borb a bla

これは、王室の君主の目を見て、ということです。また 「borb a bla」、はつまり広大な所領と大勢の兵士です。

    Ailill Finn mac Domnaill Dail

つまり、エリスの皇帝、西欧の皇帝であらせられる。

    An seglann is saor mor losg

これは、彼の衆議は貴く、戦士団と武力は強大であります。そういうことがこの歌の意味合いでございます。ブリクリウは述べた。

「これ以上の詩は聞いたことがない」とガウァンラズは口にした。「あなたがたが求めたもの全て、それ以上の価値がある」
そしてブリクリウには歌で求めた通りの報酬が与えられた。かれはその場で三日三晩過ごした。
ある日、ブリクリウとアリルが話していると、前者が言った。「この屋敷には全く欠点が見当たりませんな、アリルよ、ただしあなたの社交場にあなたに相応しい女王がいらっしゃらないことを除いてのことですが」
「しかしわたしにはいるのだよ」とアリルは言った。「フィンの息子である黒のアリルの娘、まさしくフリダス・フォルトハン(美しい髪のフリダス)だ。彼女はマイル・フリダス(牛)を見に行って、ラス・モーガンの西にいる」
「それはなんですか」とブリクリウは尋ねた。
「言うにたやすいことだ」とアリルは言った。「乳絞り、牛乳とたくさんの乳量の天賦がある牛だ。その牛はつまり、一夜に三百の男、その他に女と子供に十分な牛乳を産出できるのだ」
「女王を讃える歌は持ち合わせているのか、ブリクリウよ」とガウァンラズの族長たちは言った。
「確かにございます」とブリクリウは答えた。
「気がかりなのだが」と彼らの一人が言った。「もしそなたが持ち合わせていなかったならば、そなたのガウァンラズへの訪問は悪しざまに受け取られるだろうし贈り物の期待もできないだろう」
ブリクリウは女王の賛歌をアリルとガウァンラズの族長たちに歌った。
「これはよい歌だ」とアリルは言った。「我らはその返礼しただろうなぁ、女王自身がそうするだろうと我らが思い浮かんでいなければ。使者がそなたに先だってフリダスがいる場所に贈られるだろう、そして、エリンのどのような人であっても彼女より好意を抱かないだろうとわたしは約束できる」

翌朝になると、ブリクリウは出発の準備をした。しかし、彼がその場にいた三日三晩の間は彼は仲間、友人の関係を作らなかったが、彼の陰謀と介入によって、互いに致命的な敵対関係に陥っていた。
ブリクリウはそれからその場を立ち去り、レトリアハのなだらかな丘を越えてドゥン・モーガンにたどり着くまで、案内人たちが彼に随行した。
彼らがそこにたどり着くと、ケアブリの息子ブリクリウが芝地にやってきたという報せが流れた。婦人や青年、その場の女性たちがブリクリウに会いに進み出て歓迎した。
そして彼は尊厳と名誉をもって女王の家人によってその場から運ばれた。
フリダスは彼に会いに出て、三度接吻をした。また、暖かく丁寧に一行を歓迎した。
広々とした祝宴会場がその夜に用意された。そしてブリクリウは女王フリダスの隣に座して、彼女の家の貴婦人たちはその後ろの門柱へ沿って会場の王室の側に座った。そしてブリクリウの人々は彼らの対面に座った。また、彼らは料理と食物を楽しみ、飲んで陽気にになった。
???
彼女たちの一人がブリクリウは女王を讃える歌を持ち合わせているか聞いた。
「勿論ございます」とブリクリウは答えた。
「それでは、あなたの歌を吟じてくださいな」と彼女たちは言った。
随行者たちは彼の周りに近づき、(ともに)彼が前もって吟じていた歌を彼らは吟じた。
そしてこれがその歌である。

    クルアハンから我らは参った
    エルガの西のエリスへと。
    我らが過ぎしどの砦でも、我らは聞いた
    フリダスと彼女の牛のことを

    アリルの婦人フリダスよ
    彼の配偶者の名はわたしには親しみがある
    ドヴナル・ドゥアルブゼの戦の子
    気前良い貴婦人は私を見捨てはしないだろう

    わたしたちがエウィンより出奔した時、
    わたしたちの諍いの後に僅かな轍も残さなかった
    フェルグスの亡命の原因は多く
    わたしたちは大勢でクルアハンにやってきた

    クルアハンから

彼らは皆でその歌をほめたたえ、これ以上のは聴いたことがないと口にした。
そして彼はアリル・フィンの妻フリダスより歌のためにブリクリウへと宝石や宝物で返礼が与えられた。彼は一週間ずっとフリダスの屋敷にとどまった。
女性や家人の数にもかかわらず彼女らのうちに友や仲間の間柄はいなかったが、事前にうまく配置されていたけれど、彼がそこにいる間は彼の興味本位で互いに悪意や不信、憎悪を抱いたのだった。
フリダスは尋ねた。「フェルグスとはどのような男ですか、ブリクリウよ」
「なぜそのようなことをお尋ねになるのですか」とブリクリウは言った。
「それというのも、わたしには七つの頭と、それぞれの頭に七つの口と、それぞれの口に七つの舌とがあって、それぞれの舌で七つの雄弁をふるえたとしても、その人物の評価をわたくしは下せないでしょう。わたくしは彼に比肩しうる風聞をもつ英雄を知りませんから。
わたしはモイトゥラの戦いに名高き長い手のルーグ、ギリシアの王族の戦士アムピトリュオーンの息子ヘラクレス、トロイアの王族の戦士プリアモスの息子ヘクトールを除いてはそのようなことを聞いたことがありません。
そしてフェルグスが力、武勇、美しさ、知力、生まれ、精神性においても、また名声と寛容さにおいてもこれら全ての英雄を凌駕すると敢えて宣言いたしますわ。
付け加えると、世界の王たちの中でも彼よりも戦士に気前が良い者はいませんわ。なぜなら毎年のサウィン祭に彼は三千輌の戦車と三千枚の盾、三千振りの剣、三千の金の―、三千の―、そして三千着の様々な色の甲冑を、彼の一団にいるクラン・ルズラゲの三千の王の子、君主、公、勇士、戦士や英雄たちに贈っているのですから。
そしてアリルとメイヴに仕えている傭兵や戦士、王子や君侯や勇士や戦士や英雄たちの妻に
王が未だかつて与えなかった俸給を与えたのも彼なのです」
「彼は三百の赤金のイルナ――、それに彼の家臣のための色とりどりの甲冑を手にしています。ただ一つ、彼の戦での武功がなければ――(註によれば以降訳出不能)」
「誓って言いますが、」とブリクリウは言った。「フェルグスは三十の戦に臨み、勝利しました」

これらの戦いの一つが赤のロスの息子、ニアル・ニアヴロナハ(輝かしい業績)に対するインヴィル・ツアグの戦いで、多くの君子と戦士Rはそこで死んだ。またカーン・エオラルグでの別の戦いでは、女戦士カウァリフタが死んだ。カーン・エオルグで行われた別の大きな戦ではEの息子エオラルグの息子のボルグの息子のボルグと二十人が死んだ。そしてインヴィル・ロインネの戦いではタラの王、フィンナマールの息子フィンが死んだ。マスティウの戦いでロスの部族全体に勝利したのも彼だ。そしてロスの部族に対するロスのムラハ・ドゥブの戦いも同様だ。そしてコンホヴァルとウラズに勝利したマナの戦い。ドゥルタハトに対する不屈の戦い、そこではエオガン・マクドゥルタハトが殺された。そしてクラン・デザに対するルアフラの戦い、二つの峰の砦の戦い(おそらくアヌの乳首の地のことか?)、ボーフェの戦い。
また列挙しきれないほど多くの戦い、これらの戦いと遠征の証としてこれらの四行詩を歴史家が作った。

    力強い者、多くの塔のフェルグス
    彼はコンホヴァルを戦いで屈服させた。
    彼に力に置いて匹敵するものは見かけなかった、
    ルズラゲの出身

    ロスのいかなる息子よりも強大だった
    いかなる手よりフェルグスのそれは力強かった。
    王の模範はロスの息子、
    銀や金を得ることにかけては。

    彼は三百輌の戦車を与えた
    武器や多くの盾も
    ――ふさわしい装身具も
    彼の戦士たちへの俸給として

    わたしは確信をもって宣言する
    そして吹聴しない
    フェルグスは勝った――
    エリンで三十の戦いを

    クラン・デザを降したルアフラの戦い、
    彼は大勢を辱めた、
    クラン・ロスを降したマスディウの戦い、
    ムラハ・ドゥブ・ロスの大戦。

    ボーフェの戦い、三番目に言及しよう
    Bre――を降したインヴィル・ロインネ
    ――
    そしてロック・エオルグの戦い。
    ――
    ――
    ――(三十)百の赤金のイルナ
    ――
    傭兵と戦士たちの妻に

    ――彼の頬でもなく顔に、
    (誰も)彼から拒絶されることはなかった
    ――彼は決して誤ったことは言わなかった
    戦士になった日から

    偉大なことよ

「わたしは言いましょう、」とブリクリウは言った。「フェルグスは彼がアルスターの王でないことと、彼に相応しい妻がいなかったこと以外には欠けたるものはない、と」
「わたくしも同じような窮状ですわ、ブリクリウ」とフリダスは応えた。
「ふさわしい夫がこの世にいないこと以外にはこの世で不足するものはありませんの」
「誓っていいますが」とブリクリウは口にした。「わたしはあなたの夫の(アリル)フィンよりもすばらしい配偶者に出会ったことはありませんね」
「お馬鹿なことをおっしゃるのね、ブリクリウ」とフリダスは言った。「そのような言葉をあなたから聞きたくありませんわ。わたしはフェルグスを大いに愛していますから、それにあなたが出発した時には、同意の有無にかかわらずわたくしをガウァンラズから連れ去りに来るようにフェルグスをゲッシュで束縛すること以外には(聞きたくありません)」

ブリクリウはこれを聞いた時に激怒して言った。「悲しいものです、あなたの愛を与えられる男の邪な運命は。彼は結局は彼を怨むような妻を決して娶りませんでしたので。それに絶倫のためにメイヴの社交場をのぞいてはふさわしい配偶者を持つことはありませんでした。
そしてとりわけ彼の名誉にかかわる別の事柄、エウィン・ウァハでゲールの強大な三本の灯火(ノイシュらのこと)が彼の保護下において殺されてしまったということもありました。
また彼の統治の間に繁栄の太陽は臣従する諸侯にの上に輝くことはありませんでした。さらに、女王よ、私は北のムイルン・モルファハ(Muirn Molfaig)の都市からここへ旅をしてきました。そして全ての私の旅においてアリル・フィンよりも良い人を見たことはないのです」
「無駄話ですわ、ブリクリウ、私はそのようなこと信じません」とフリダスは言った。「ですがあなたはわたしの命令を実行する見返りにエリンの宝物を選ぶでしょう、ブリクリウ。わたしはエリンの者どもが一団となってクーリーの牛を奪い去ろうとアルスターへ侵入しようと聞き及んでおりますから、フェルグスにどのように事を進めるのか指導してさしあげます。彼に軍馬と武器、防具の軍資金をガウァンラズに求めに来させなさい。わたしは彼についていきますわ。それに三千のあなたのように勇敢な者どもが来るならば、そして彼ら全てに相応しい妻も配給いたしましょう。
そしてわたしのエリンで最良の角がない牛も随行させましょう。もしもわたしの群れとマイル・フリダスが私に同行すれば、彼らはエリンの者どもを毎週七夜は十分に養うことができます」
そして彼女は喋るように愛の歌をそらんじた。

    ブリクリウよ、すぐにわたしにもとから立ち去りなさい
    そして不毛なるクルアハンへ行きなさい。
    ロイの息子に九つのゲッシュを課しなさい、
    もしも彼があなたとともにすぐさま来ないならば。

    三千人がこちらに来たとしても
    フェルグスとともに(?)――
    彼らのうち一人につき一人の妻が
    彼女の旦那さまと臥所をともにするでしょう。

    わたしが牛と家畜の群れを連れて行けば
    フリダスは軍勢を養うでしょう
    毎週七夜
    遠征が終わるまでずっと

    東方の民は莫大な富を有し、
    彼らの詩人たち――
    わたしはあなたがたを守りましょう、暴力の奔流、
    二つ――

    貴婦人よ、あたなは自らに課してしまった
    大いなる約束を、
    あなたの勇敢な王を見捨てようと
    ――のため(?)。

    彼はわたしの正当な配偶者、
    ロイの息子と呼ばれる男、
    わたしこそ彼に相応しい妻でしょう、
    (さあ、行きなさい)ブリクリウよ

    ブリクリウよ

ブリクリウはそこでその場を立ち去り、オラヴ(ブリクリウのことか)は前に女性からの富を決して持ち去らなかった。彼はアース・フェンの砦へと進んだ。
人々が彼を見かけると彼らは挨拶をするために皆で前に進み出た。彼らは暖かく出迎え、度々接吻をして、フリダスを好ましく思わなかったのか尋ねた。ブリクリウはいいえと言った。
彼はその夜はアース・フェンの宮殿に宿泊した。彼は早朝に起きると贈り物と宝物を求めた。一人につき白銅の戦車を有する百五十の戦士が彼に送られ、彼らの総勢は大軍の様相を呈した。彼はアリル・フィンと族長たちに別れを告げた。そしてアリルに、フェルグスがガウァンラズから軍馬や武具の軍資金を求めて彼とともに交渉しに来るだろうと話した。
これが彼らの道程である。犬の湖の終わりと、ミース州のフィアフラの土地と呼ばれるエアラアンの息子ブレスの領地の赤い流れの踵を過ぎ、エオアルの半島と呼ばれるロスの銀の半島を横切り、フェランの渓谷と呼ばれるドルイドたちの渓谷を越え、ウァネの一族のコランのアーレの息子の平原よ呼ばれるフィドガの息子ファルの娘のコランの平原に入り、馴染み深い美しきケシュ・コランと呼ばれる古い丘の小さく丸い(あるいはむき出しの)頂きをそばを通り、そしてブイルと呼ばれるファングレン(傾斜した谷)の渓流を横切った。
ここでアリルの家臣は帰っていき、ブリクリウはクルアハンへと進んだ。盛大な行列が近づいてくるのが目の当たりになった時、皆はそこで大いにいぶかしんだ。
彼らはそれはアルスターから略奪品を持って帰ってきたケトかケヒトの息子コノザーだと思った。ブリクリウがクルアハンに着いた時、彼は歓迎され、人々は彼が持ち帰ってきたものはどんな戦利品なのかを尋ねた。
「ほかならぬ、」とブリクリウは口にした。「ガウァンラズ、アリル・フィンと気前の良い貴族たちからのわたしへの贈り物ですよ」
「アリル・フィンの屋敷はどのようなたぐいの屋敷ですか」とメイヴはブリクリウに聞いた。
「わたしが今まで訪問した中でも最上でございます」とブリクリウは答えた。
「さらに」と彼は付け加えた。「わたしはそれに比肩するものを見たことはございません、わたしがフェルグスと地球を旅しててからというものですよ」
メイヴはこの世のどれか一つの屋敷でも彼女の所有しているものよりも優れているという評価されたので、激怒した。
「わたしに喧嘩を売らないほうがいいですわ、ブリクリウ」とメイヴは言った。
「滅相もございません」とブリクリウは言った。「それでもアリル・フィンの宮殿には極めて大勢のオラヴや詩人、道化師たちそして女性の遊び相手や少年、子供たちがいます。それに勇士、戦士、闘士、強力な兵隊たち。郊外の祝宴に都会の歓待してくださる人々。以下のような名の勇士たちがございます、すなわち一行には三百のフェルディアを連れたフェルディア・マクダワン。三百のフロイフを連れたフロイフ・マクフィダハ。ゴル・オレフおよびアクラと三百のゴル。三百のガウァンたちとシドガルのガウァン。三百のデュバンとガウァンの子デュバン。三百のダアタたちとディベルグの子ダアタ。百のフォスガムインとエリスの三百のフォスガムイン。そして三百のブレスレンと七人のブレフィネのブレスレン。
そして、わたしは我が名誉にかけて申し上げますが、メイヴよ、同じくらい異なった名前の者がいるのです」
メイヴはガウァンラズを憎んでいたけれども、彼女の有する戦士たちの賞賛を聞くことは彼女を喜ばせた。そしてブリクリウはアリル・フィンの宮殿の賛美を続けて詩を詠んだ。

    わたしはクルアハン・アイから訪問の旅に出た
    わたしはあなたに告げましょう、確かな道のりにて
    わたしがたどり着いた宮殿を持つ良き君主よ
    彼にふさわしい良き配偶者よ

    わたしは荷車の浅瀬の城にたどり着いた
    わたしはそこで多くの物語をした
    アリル・フィン、エリスの戦士のもとに
    ドムナンの王の子

    その城の他の全ての人よりも背が高く
    人より容貌が優れ、気性においても快活である
    二千四百もそこでは語られた
    同様の名の勇士たちについて

    三百の力強いフェルディアがそこにいる
    ダワンの息子フェルディアとともに。
    三百のフロイフがそこに住んでいる
    フィダハの子フロイフとともに。

    三百のガウァンたち、戦において勇敢なるは
    シドガルのガウァンとともに。
    三百のデュバンたち、無慈悲な握りは
    デュバン、良き若者とともに。

    三百のフォスガムインたち、真実の声明、
    エリスの三人のフォスガムインとともに。
    三百のゴルたち、磨かれた槍を持つは
    ゴル・オレフ、アクラとともに。

    三百のダアタたち、王の一団、
    ディベルグのダアタの周りに。
    三百のブレスレンたち、献身を好むは
    ブレフネの七人のブレスレンとともに。

    全ての雄叫びよりも高らかな雄叫び
    この王家の、堂々たる物腰の。
    同様の数の者がいて、
    それらの部族の名前とは異なるのです。

    わたしはエリンで見たことがなかった、と敢えて言いましょう、
    これに比肩する王家を、
    あまたの槍を有するアリル(フィン)の宮殿を、
    わたしが旅した人溢るる宮殿を。

    わたしが旅したのです。

「アリル・フィンの宮殿の賞賛においてあなたは正しい」とメイヴは言った。「それでも、わたしのものがその二つよりはるかに上位にあるのです。わたしの英雄と勇士たちの強大さはもっと偉大です。わたしの族長たちと召使はもっと多い。若者も女性の数もずっと多い。宝石や宝物も。乳牛も畜牛も。わたしの兵はもっと高貴な生まれで、もっと強い。わたしの楽人と芸術家と学者はもっと多い。わたしのオラヴと道化師と小人もです。わたしの奴隷とこどもたちも。わたしの女の民や侍女も。クルアハンの(雄大なる)宮殿のほかに、祝宴のための資産と道具も優れています。大きさや美しさ、飾りつけにおいてそれに匹敵や比肩する建物はエリン中のどこにもないからです。中庭と部屋と窓の数でも。その金と宝物と貴石の量においても」
「朝から晩まで四種の異なった上掛けで覆われた、きらめく貴石の宝石をどの頂きにもあしらっている黄金の四本の柱を備えていて、美しく整った形をしており水晶で飾られたわたしの部屋の周りに百五十の大部屋があるのを目の当たりにするでしょうから。そして柱からこれらの覆いが取り払われる時には見る者全ての顔を照らします。これに加えてわたしの五十人の勇士たちがフェルグスとコンホヴァルの息子コルマク・コンロンガスに付き添っています。さらにフィンナヴァルとカーニア(Cainnire)が五十人の侍女と一緒にわたしたちのオラヴと学者のことを話さずにそこにいます」
「わたしはあなた様と言い争うつもりだなどと言いませんよ」とブリクリウは言った。
「それでもアリル(フィン)の宮殿はエリンで最も偉大ですね。その建物の描写はこのようなものです。百五十の大部屋と上等な寝椅子のまわりに三つの下等な寝椅子、銅の磨かれた床のうえに、一片の埃も痕に残るしみもございません。ドアの周りには十四の椅子があります。アリルの部屋についてですが、金の兜を被る百五十の戦士が控え、金で着飾った百五十の王家の乙女を伴い、百五十の小姓とさらに詩人たちとオラヴたちもおります。白銀の頭を持ち、頭のうえには美しい金の羽をのせた五十羽の鳥がその寝台のまわりにおり、一羽を除いてそれぞれ二羽を宝石できらめく白い鎖で繋いでおります。これらの鎖の両端には金の音色の良い玉がついています。そして風がその建物の屋根や天窓や窓を穏やかにそよぐと、音色の良い玉の旋律というのが賢者につま弾かれる琴の弦のそれと同じくらい甘美なのです。アリル(フィン)の後ろには建物を上のほうに突き抜けて行って宮殿の屋根の棟を為す銀と白銅の仕切り壁があります。五十の黄金の兜が少女や乙女を守ります。そのうえ、百五十の王の兜がアリル・フィンを取り巻いているのです」

    アリル(フィン)の素晴らしい宮殿よ
    わたしはとても喜ばしいそこからやって参りました。
    大勢の勇士がそこにいる、まことに、
    大勢の王、大勢の君主よ。

    百五十の部屋があり
    そびえたつ壁は屋根へ届く。
    それらそれぞれの個々の部屋に
    五十人(の戦士)が目立っている。

    アリルの美しい部屋
    その中の喜ばしい宴
    備わるはきらめく真鍮の壁
    赤金の美しい柱

    寝台の下部
    主人を休めるための純白銀
    真鍮の真ん中
    黄金の上部

    その寝台の周りに飛び回る
    止むことのない鳥たち
    人の音楽よりも甘美なるは
    かれらのさえずりを聴くこと

    水晶と柘榴石(で飾られた)
    四本の金の柱。
    五十の水晶のランプは
    人々のいる部屋の暖かな灯り

    五十の特別な編みかたの鎖
    平和な聖地の金でできた
    わたしの口は嘘をつかない
    その建物の二羽の鳥ごとに
  
    銅の磨かれた床
    どのような方角であれわたしはそれに近づく。
    百四十人の男、相応しい戦士たちは
    王の寝所の護衛

    銀と白銅の仕切り壁
    比類なきアリルの背へ
    あまたの剣の部屋に
    屋根の壁につながる

    痛飲する百五十の勇士
    君子や貴族の。
    かしずく百五十の勇士
    若者や侍従の。
  
    白銀の五十のゴブレット、
    酔いしれさせる蜂蜜酒を飲むための。
    銅の五十の磨かれた皿、
    五十の杯、五十の広口杯(ビーカー)

    百五十の禁の兜たち
    屋敷の乙女たちを取り巻く
    そして百五十の王の兜たち
    まことに素晴らしき宮殿よ

    素晴らしきかな

全てのエリンの人々の族長は建物のより高貴な描写は聴いたことがないと言った。そこで論争は止んだ。メイヴは彼女がブリクリウと論争したことを悲しんだ。
それでも彼が彼女と討議したことは、彼女自身の毒々しさと好戦的な性格のためだったので彼女はブリクリウを歓迎した。
「わたしたちはそれ以上だと思いますわ」彼女は口にした。「あなたがそのように上手く話したことよりも」
クルアハンの大宮殿はそして準備され、メイヴとアリルとフェルグスとコルマクと全ての族長が(祝宴の席に)座った。オラヴたちは席につき、そしてブリクリウはフェルグスの向かい合って座った。その他の者どもが酔いどれた時に、ブリクリウは言った。
「あちらに、フェルグス、馬と盾が付属した百五十の戦車、三百の外套、あなたの一族の女どもに約束なさった三百の赤金のイルナ、あなたの戦士に配るための異なった模様の甲冑があります」
「そなたに幸運と祝福があるように、ブリクリウ」とフェルグスは言った。「富は莫大で、所産は膨大だ」
それからしばらく酒宴と余興を楽しみ、フェルグスとコルマクとドゥブサハと隻腕のギャバの子アンガスがブリクリウに話をしにきたとき、
「あなたはほとんどなにも知らないでしょうが、親愛なるフェルグスよ、わたしはあなたのために懇願してまいりました」とブリクリウは言った。
「さて、なにをかき集めて参ったのか、ブリクリウよ」とフェルグスは尋ねた。
彼らはこのように話し、彼らの間で以下の詩が繰り返された。

    僅かにしか、あなたは知らないでしょう
    偉大なるフェルグス、ロスの息子よ
    わたすはあなたのために約束してまいりました
    寛大な態度の婦人たちに

    そなたに言おう、ケアブリの息子よ
    そなたがそのことを手厳しく論じたとて
    その土地は快適、
    見る者が粗暴なれども

    さてその言葉を取り下げていただきましょう
    ゲッシュ、女性の痛み(陣痛)があなたに課されております
    もしもあなたが彼女の家から連れ去らなければ
    あまたの功業を為したアリルの女王を

    言うな、恥知らずめ
    見苦しいことよ
    我らの日々に得ることはできまい
    我らの居場所をコナハトで

    あなたは力をわきに投げ捨ててしまった
    あなたの城を去ってからというもの
    あなたの武勇と恐ろしさは飛ぶようになくなり
    あなたの精力以外はみな消えてしまった

    僅かにしか

白髪のケアブリの息子の言ったことを聞いて、(ドゥブサハは)ブリクリウに暴力的な蹴りを見舞った。そのためオラヴの背は瞬く間に燃え盛る火に投げ込まれ、焦げて彼の背か焼かれているのを列席者が総出で助け出したのだった。
このため宿所は大いな騒ぎとなった。多くのウラズたちは武器を引き抜き、タジィウ族も唸り声をあげて応酬した。メイヴは顔を上げてふいに尋ねた。
「オラヴに対してなにをしたのか、ウラズの者どもよ」と彼女は言った。
「奴をしばしば痛めつけているのは」とドゥブサハは答えた。「奴の鋭くやかましい舌鋒だ」
フェルグスはブリクリウへの公衆の面前での侮辱にひどく憤慨した。彼はドゥブサハに攻撃をしたがったが、ドゥブロンガスたちがそれを妨げた。メイヴとアリルは彼らの前でのブリクリウへの侮辱についての諸々の所業全てを非難した。クルアハンの女子供はみなでブリクリウが受けた大きな侮蔑を喜び、彼らはこれに勝る罰に値する舌はないと言った。というのもクルアハンには互いに愛し合う二人はおらず、ブリクリウによって彼らの間に破滅的で和解できない敵意をもたらされたからだった。
その夜に物事は進んだ。翌朝が明けるとフェルグスとドゥブロンガスたちはブリクリウを離れた場所に呼び出し、尋ねた。
「どのようにこの逢引の約束はなされたのだ」
「あなたにお伝えいたしましょう」とブリクリウは言った。「フリダスがあなたにするよう求めたこと、すなわちガウァンラズへ軍馬や武器や甲冑の軍資金を求めに行くことと、彼女が彼女の家畜の群れとエリンで最も良い角の無い牛とあなたの家臣たちに合わせるための、つまり彼ら全ての妻として王や君子と共寝するのにふさわしい三千の女性たちを連れて来るということです。そしてあなたはエリンの人々、男も女も若者も子供も毎夜七夜を養うこれらを持ち去らねばならぬのです。あなたはこの計画の提案に乗ってください」とブリクリウは付け加えた。
「もしあなたがその遠征に出かければ、それは熾烈な争いの予兆と災厄の原因となるでしょう。なぜならあなたは功業をなした技の巧みな勇士たちとガウァンラズの戦士からなる俊敏な戦団と即応の組み討ちや根気のいる闘いをするでしょうから」
「それはこういうことか、」とフェルグスは言った。「そなたがガウァンラズへ我らに同行しないと」
「いたしません、偉大な君よ」とブリクリウは言った。「なぜならあなたはわたしのことで寂しく思わないでしょうし、エウィンのほうがわずかばかり居心地がいい」
「そうはならんぞ、ブリクリウよ」とフェルグスは言った。「もしもそなたが快くついてこなければ、その髪の毛と結い上げた髪を残して、否応なしに来ることになるだろう」
「行きますよ、」とブリクリウは言った。「わたしは悲しい……」
そしてこのように話して、彼は以下の詩を詠み、フェルグスが答えた。

    あなたにお伝えします、寛大なフェルグス
    ロイの優しい息子、平和ならざる報せです
    フリダスはあなたに授けたのです、偉大な業績の予兆を
    わたしはそれをよく知っています、大いに明らかな愛を
※以下二行は左の句がフェルグス、右の句がブリクリウの言葉だろう。
    そなたはここにいるべきだ、    彼女はあなたにに課したのです、
    そなたが悲しむならば、        今夜に九つのゲッシュを。
    わしは西へ行こう、そして彼女を私の許に連れて来こよう
    彼女を求めて行く気軽な仕事よ

    もし彼を私が西でかくしゃくと元気にしているのにまみえたなら
    彼の怒りが沸き上がり、坂は紅く染まるだろう
    「我が言葉を伝えよう」とアリル・フィンは言う
    「彼はまず海で漂流させられるべきだ」※

(※おそらく漂流の刑のことか。帆や櫂もない船に乗せて漂流させ、死ねばそれでもいいし、死ななければ許されるというもの。)

    わたしはクルアハンの軍勢を見て、あなたがたは大勢であるけれども
    かの王に敵対するにはあなたがたの武力は微かでありましょう。
    ここにいるあなたがたの民、あなたは西へ行くはずで
    武器の優れた担い手に遭遇するでしょう。
  
    ここにいるあなたがたの民、わたしにとっては悩ましいのですが
    猛禽はあなたがたの頭上に飛び回るでしょう。
    手は土に埋もるでしょう。唇は青ざめるでしょう。
    虐殺が蔓延るでしょう。猛禽はたらふく食うでしょう。

    ドナルドと彼の軍勢はあなたがたを攻撃するはずです
    彼らは戦利品を得るでしょう、わずかばかりの遭遇戦ではないでしょう。
    赤のダーリの息子のフェルメンがその場にいるはずで
    彼は突撃するでしょう、戦場に死体(が溢れるでしょう)

    ゴル・アクラの軍勢が西から来るはずです
    彼の軍は良く統率され、死者は膨大になるでしょう。
    わたしはあなたに随行いたしません、わたしはそこまで強くありません
    わたしはここに残ります、それがわたしには最もよいのです

    愚かなブリクリウよ、そなたはわしとともに来るのだ
    百の槍からの護り、わしの盾の庇護のもと。
    わたしは重い病に苦しんでいるのです(以下二行ブリクリウの台詞)
    わたしを休ませていただきたいのですが、英雄よ、我が家にて。

    わしとともに来い、ぜひとも喜んでな、甘い声のブリクリウよ
    さもなくばお前は首を置いてすぐさま来ることになる。
    わたしはついていきますよ、涙の兆しです
    わたしの運命は過酷だ、ほんとうの話です

    あなたにお伝えします

かれらは試練に行くことを決意した。そしてそれから彼らはクルアハンへと行くと、アリルとドゥブサハがチェスをしばらくやろうと座っていた。まさにその時フェルグスはアリルとメイヴに会見しに来たのだった。彼は武器と甲冑の支度金をガウァンラズに求めにいく許可を願った。そしてかれはただちにアリルとメイヴに出立した。
ドゥブサハは彼が彼らに随行する準備ができていないのかと聞かれた。
「先に行っていてくだされ」とドゥブサハは言った。「そして今夜どこに泊まるのかを教えていただきたい」
「わかりますわ」とメイヴは言った。「わたくしの執事長のモダ・ミナズウァダズの家、スーク川の――浅瀬の、ブレアの黒い河のほとりにあり赤い浅瀬の砦です」
ドゥブロンガスたちとフェルグスは全身して赤い浅瀬の砦に到着した。モダ・ミナズウァダズが出迎えてフェルグスとコルマク・コンロンガスに接吻をしてドゥブロンガスの全ての族長たちに歓迎をした。その後、彼らはかしずかれ世話をされた。それというのも彼(モダ)はアリルとメイヴに備えて盛大かつ並外れた祝宴の準備開いたからであった。その王の宿場が大きな砦(ラース)だったのとそのうえ彼がその地域の執事長だったからだ。
さらにそこではケルド(詩人や技師を指す言葉)が遵法する刺突(?)、および獰猛な戦闘および休戦の三つ(の規則)と歓待する人が遵法する満杯の大釜および万人への歓迎および誰に対しても拒絶しないこと三つがあった。
そして彼らは終日そこにいた。かれらのこれまでの成り行きである。

ドゥブサハに視点を移そう。クルアハンにて午後の日が彼に差した。彼は試合に負けて囃し立てられ笑いものとなった。彼はカッとなって従僕に馬が繋がれているか、あるいは戦車が置かれていないか聞いた。
「そこにございます」と若者は言った。馬はドゥブサハのもとへ連れていかれた。彼は戦車に飛び乗り、赤い浅瀬の城へ駆けて行った。そしてドゥブロンガスの随行者たちがドゥブサハを見かけると、彼らは彼を罵った。ドゥブサハは戦車から降りてフェルグスのいる方向へ進んだ。皆が彼のために道を空けた。
ドゥブサハの召使いはというと、彼は辺りを見回してドゥブロンガスたちの馬とフェルグスの馬がモダのそれらと同じようにそれぞれの囲い地にいるのを見かけた。彼がドゥブロンガスたちの馬匹の少年たちに近づくと、彼らはあざ笑って彼にも彼の馬にも部屋を見繕う許可を与えなかった。彼はフェルグスの家臣のもとへ行き、彼らは彼をはねのけた。彼はそれから土地の君主の召使いに近づいた。
「死んでしまえこの野郎!」と彼らは言った。「もし俺たちがやるように全世界がお前に対応したなら、お前にはそこじゃ休む場も得られないだろうよ」
その若者は馬を三度世話をしてやったが、彼は馬たちのための場所も、寝床も餌も、(彼自身の)食い扶持も得ることができなかった。
なにごともうまくいかず、彼は主人のいるところにやってきてこのように言った。
「わたしは悪い主人の召使いに違いありません、今夜のわたしは食べ物も飲み物も寝る場所にも事欠く有様ですから」
ドゥブサハはこれを聞いて立ち上がって言った。「どういうことだ、モダよ」と彼は言った。
「吾輩の召使いに食べ物も飲み物も寝る場所も手配せぬとは」
「寝る場所については」とモダが言った。「御一行全てに共通するもの以外には一つもありません、そしてあなたの召使いも他の戦士のそれもその中には部屋を見つけることはできないでしょう。食べ物についても同様です」、モダは付け加えた。
「もしある男が暴食してあなたの召使いが不満を覚えるならば、彼はきっと九人分の暴食をするのでしょう」
ドゥブサハはその答えに怒り、二人は喧嘩した。そしてドゥブサハは立ち上がろうとしたが許されなかった。しかし、従うことをやめてドゥブサハは立ち上がり、モダに剣を一閃して彼を両断したのだった。
フェルグスはそこで立ち上がったが、ドゥブロンガスたちも立ち上がり彼を背後から抑えた。爾来、ドゥブサハによるモダの殺害に比べうるようなことにはフェルグスは出くわさなかった。
その夜を彼らは心配して過ごして、とうとう夜が明けた。そしてフェルグスはモダ・ミナズウァダズの遺体に近づき、大いに嘆いてこのように喋った。
「なんと嘆かわしい行いをしでかしたのだ、ドゥブサハよ」と彼は言った。「そしてコンホヴァルの息子フィアハとフィデルムの息子ダーリを殺した時のエウィンでのそなたの行いは不快だった。そして他にそなたがやった殺人、ラディスとレナヴァル、つまりエオガン・マクドゥルタハトの二人の娘とエルジュの息子ムンレマー(太い首)の妻の白い首のモイレンとエルゲ・エフベルの妻の金髪のエーニャの殺人も残酷だった。そなたがこの行いをしでかすように引き起こしたのは名誉ではないのだ」
そして彼はしゃべるようにこの詩を詠んだ。

    ドゥブサハよ、そなたはわしらを裏切った
    そなたが久しくわしらを恥辱へと導いてきた
    そなたの行いにもかかわらずこの力は邪悪だ
    エウィンでのそなたの行為もそうだった

    美しいフィアハ、コンホヴァルの息子
    そなたの手にかかって彼は死んだ。
    フェデルミドの息子のダーリの死、
    それは彼であったとしても、益となる行為ではなかった
  
    白い首のモイレンをそなたは殺した
    ムンレマーの妻、恥ずべきところなどない
    美しい髪のエーニャをそなたは傷つけた
    エルゲの妻、酷薄な諍いよ

    ラディスとレナヴァル
    彼女らをぐちゃぐちゃにしたのはそなたの手だ
    ベラウァンの出の美しいエーティン
    彼女もまたそなたが殺してしまった

    そなたの手にかかってモダ・ミナズウァダズは死んでしまった
    罪を犯さなかったメイヴの偉大なケルド
    そなたは冷酷な行為をしでかしたとはいえ
    そなたの冷淡な性根からのものではない

    そなたはわしらの亡命の原因となった
    そなたがわしらを今や助けることはできないといえど。
    そなたはフェルグスの統治を破滅させた
    野蛮な行いをしでかしたのだ、ドゥブサハよ

    おお、ドゥブサハよ

このようにして夜は過ぎた。彼らは翌朝に心配し悲しみつつ起床した。フェルグスは悲しみに沈んであちらこちらと歩いた。そして深刻に彼の族長たちをとがめて言った。
「わしらがこのような行為をしでかしてしまってはわしらはもはやコナハトに住むことも、権力を保持することもかなうまい」
これらの知らせがクルアハンに届き、人々はこれらを耳にすると怒鳴り吠えた。メイヴは立ち上がって彼女の郎党を集めた。彼女はマネたちに大いに八つ当たり(?英語ではpress、原文ではgreisとある)して、ドゥブロンガスたちを追跡し、彼らの犯した酷い殺人の復讐を催促するようにケトとマガハの一族に使者を送った。しかしアリルは彼女をなだめて言った。
「余は一連の成り行きには関与せぬぞ」とアリルは言った。「この国のよそ者は奴らの暴行によって死に追いやられるべきではない。それに余たちの同盟も彼らの犯罪によって失効するべきでもない。そのうえ余たちはヨーロッパを略奪者や襲撃者たちが大いに横行している時期に敵を作るべきでもない」
そこでフェルグスの追跡は取り止められた。

さてフェルグスの一連の出来事が語られた。彼らは彼らがなすべきことについて審議して、彼らは西方に行くことを決意した。その夜、アルネの入江の砦、ドゥブ・ドクラズの息子アルネの家に到着した。そしてドゥブの息子アルネと七人の兄弟、つまりアルネにちなんでその入江は名づけられたのだが、彼らは立ち上がって手厚く丁寧にフェルグスを迎えた。
そして歓待する人たちの家に彼らが上がりこんだ。フェルグスとコルマク・コンロンガスと他の族長たちは宿泊所に案内された。この家は便利で快適にしつらえられ、フェルグスは席についた。ドゥブ・ドクラズの息子アルネはフェルグスの隣に座り、コルマク・コンロンガスは彼の隣に座った。そして歓待する主人の兄弟、七人のアルネたちはコルマクの隣に座った。ドゥブロンガスたちの七人の最も高貴な英雄たちがその隣に座った。そしてブレアクとナンセスグ、歓待する主人の二人の息子が勇士たちの席に彼らに向き合って座った。コナル・ケルナッハの息子の白い胸のウアスネはルアグネハの息子ゴヴネンと共に彼の隣に座った。そしてフェルグスの族長たちとアルネたちは交互になって満席となった。
彼らは世話を焼かれ、蜂蜜酒や葡萄酒や肉やあらゆる種類の厳選された食事を給仕された。
そして屈強な英雄たちは酒を勧められ、とうとう陽気になって満足し、酩酊して不覚になって盛り上がったのだった。
就寝の時間になると、フェルグスの寝台として彼の寝椅子が整えられ、それぞれの寝椅子もすべての上級貴族の寝台として整えられた。それぞれ自分の寝台に飛び込み、ドゥブサハはただ一人床に残った。ドゥブサハは尋ねた。
「おれの寝台はどこだ」と彼は言った。「ご自身のご友人にお尋ねなされ」とアルネは答えた。ドゥブサハはこれを聞いてアルネに喧嘩を吹っ掛けた。
フェルグスが勇士たちの暴言を聞き、とても恥ずかしく思ってドゥブサハの悪口を罰するために起き上がった。そしてドゥブロンガスたちはフェルグスからドゥブサハを擁護するために立ち上がった。その場の女性と非戦闘員は荒っぽいやり方で集まった。今やその砦の全ての人々は大騒ぎを聞きつけて、フェルグスの臣下とアルネのそれらは皆で直ちに城の外に出た。
彼らは王家の宿泊所の人々をなだめてドゥブサハを危害から救った。コルマク・コンロンガスとドゥブ・ドクラズの息子アルネは人ごみを見るために前に進み、二つの集団を引き離すのは容易な仕事ではないと悟った。
家の中、あるいは外でこれらの戦士たちの家来六十人が死んだ。それから彼らはそれぞれ自分の家来に加勢し、そして彼らは日が完全に明るくなるまで気がかりで錯綜させられた時間を過ごした。
フェルグスはとても早く立って、彼の族長たちを周囲に集めた。彼は芝地に出て、怒った雰囲気の中でアルネたちに別れを告げた。彼はそれから前後に彼の勇士を護衛に配置した。彼らはその地方を急いで立ち去り、彼らの先触れをするその場にブリクリウを送ってアース・フェンの砦に着くまでは行進をやめず強行した。
ブリクリウはアリル・フィンがいる宮殿に行くとそれと気づかれた。皆で彼に挨拶しようと進み出て、真心から暖かい歓迎をした。かれらは彼に何度も接吻をして、彼に消息を尋ねた。そしてアリルは言った。
「城にブリクリウをお運びしなさい」そしてブリクリウはその場に連れていかれた。
天井高くとても快適な東屋、そして豪勢な家具がそなえつけられた寝室がブリクリウと彼の一団のために準備されイグサが敷き詰められた。そして彼らはそこで彼らに給仕される予定だった部屋に行くように話した。
「わたしは決していきません」とブリクリウは言った。「その訳はというとわたしたちよりも偉大で高貴なお方、つまりロイの息子フェルグスがあなたがたと会談をして同盟し、あなたがたガウァンラズに武器や甲冑の支援を求めにくるのです。なぜならアリルとメイヴは別としてもエリンであなたがたほど彼が友情を求めたいと思うものはいないからですよ」
「彼の来訪は喜ばしいも同然だ」とアリル(フィン)は言った。「彼は軍馬と甲冑そして勇ましい武器を訪問の返礼として受け取るだろう。そしてガウァンラズは彼の満足するどのような試練や遠征にも付き合おう」
そして彼らはフェルグスを歓迎しようと浮き浮きした。
「フェルグスはどれくらい離れているのか」とアリル(フィン)は聞いた。「かなり近いです」とブリクリウは言った。そこでアリルはフェルグス・マックロイのために特別な王家の一棟を準備した。
さてその建物が整理され準備されるとアリル(フィン)はブリクリウに言った。「中に入ってわれらの食事をお召し上がりください」
彼らは行って、出来立ての様々な食べ物や熟成した高価な酒が運ばれ、彼らは酔いしれて大声で気も大きくなった。そのオラヴの心は酒の強さと気まぐれな不運によって高揚した。
大いに、また頻繁に蜂蜜の古酒を飲んだことによりブリクリウの感覚は完全に混乱した。
彼はアリル(フィン)にのしかかって言った。「いい気分だ、アリル、あなたはこの場にフェルグスが来る試練をご存知ですか」 「いや、存じ上げないが」とアリル(フィン)は言った。
「あなたの奥方のためにくるのですよ」とブリクリウは言った。「駆け落ちのために密かに彼女を連れ去ろうとしているのです」 「彼女はその計画を承知しているのか、オラヴよ」とアリル(フィン)は尋ねた。
「ええ、もちろん」とブリクリウは言った。「だって自由な意思に基づくか暴力によるかにかかわらず自分をガウァンラズから連れ去らないなら彼にゲッシュを課したのは彼女ですから。そして彼女は彼女の他の家畜の群れと同じくエリンで最良の彼女の角の無い牛も連れて行くと約束しました。そしてクーリーの牛争いの大遠征でエリンの者どもを七夜の夜ごとに養うことを引き受けました」
「彼の試練が異なるものであることをわたしは大いに祈っていますよ」とアリルは言った。それからその話題を取り止めて彼らは飲み明かしたのだった。
さてフェルグスについてだ。彼の家来を指揮してドゥブロンガスたちを大勢の勇ましい武器の輝かしい三つの部隊に、そして堂々とした威厳のある大いに強力な三つの戦闘部隊に、そして壮大で大規模な大軍隊に整列させた。
最初の勇士の戦闘部隊は、茶と紫の美しい色のとても大きく高い盾と飾り立てられた一色の外套、ぴったりの鈍色の衣装で縁取られたチュニックと帆立貝のように縁どられなめらかな白のよく織られた上着と細く灰色の鋭い鋼の剣と鋭い刃のよく砥がれた長い穂先の槍と隙間なくぴったりした完全に造形された長く強く輝く鎖帷子と柔らかい繻子の襟で被覆したかのような格好の良い髪でそしてよく似合った美しい形をした宝石の煌く頭飾りで武装したクラン・ルズラゲの王家の王侯たちの頂点にたつコンホヴァルの息子、コルマク・コンロンガスが指揮する二千の闘士たちから構成されていた。
それらの郷紳、貴族、君侯たちは上級王、フェルグスを取り巻いた。これらの人々はどの英雄も左手に金で飾られた滑らかに補強された緑色の盾をもっており、恐ろしげで長い血濡れた槍も、そして腰には長くちょうどよく焼き入れされた鋭い切っ先の剣を帯びていた。かれらは緑の滑らかな形をした金の飾り紐がついた外套を着て、豪華に造形された白銀の留め具で胸元を留めて、同時にどの貴族の額にも魔法の巻物で装飾された非常に優雅な王にふさわしい冠が飾られていた。
(agus co minnaib ro cuanna bricht-rinnta rig-maisecha ar foradh gacha flatha.)
(while very elegant kingly-beautiful diadems adorned with magic scrolls covered the brow of each noble. )

年長者、高齢者、賢い相談者、信頼のおけて知識のある人はドゥブロンガスたちの後列にいた。傭兵、屈強な士官、傭兵団、最後尾の部隊。彼らは青い尖頂がある外套を着て、力強い男たちは長く鋭い穂先の剣の如き先端をもった槍を携えており、黄色に紫がまだらに入り混じった多様な色をした戦旗が彼らの上にたなびいていた。
彼らはアース・フェンの城を目指して行進した。そしてその場所の人々がその近づいてくる壮大に飾られた他界(senta)の人々を見て、彼らは窓に行き、そして彼らを見て眺めるために城壁に出て行った。そして彼らは皆でその壮観な光景に胸を打たれた。
フェルグスはそれから芝地にあらわれた。ガウァンラズは彼らを見ると、フェルグスを歓迎するためにアリル・フィンと共に皆で進み出た。かれらは迎賓館(tig leptha)に案内された、ガウァンラズはドゥブロンガスの歓待のために特別な建物を用意していたからである。
そして彼らがそこに落ち着くと、彼らは武器と多くの兵器を棚に置いた。
それからガウァンラズの貴族たちがアリル・フィンによって呼び出された。アリル・フィンは彼らにゲストハウスかアリル・フィンの自身の宮殿かにフェルグスがどのように宿泊するべきか尋ねた。
「それは我らよりも彼自身と彼の貴族たちに聞くべきでしょう」と彼らは言った。「だがお前たちに聞いておるのだ」(とアリルは言った。)
「我らとしては」と彼らは言った。「フェルグスとアリル(・フィン)が互いの集団の良心と友好関係を祝えるように、フェルグスと彼の主だった部下はアリル・フィンとガウァンラズの貴族たちと一緒にいるほうが望ましい」
使者がそれから彼らに向けて送られ、彼らは宮殿に連れて来られた。そしてこのように彼らは座った。
イルス・ドウナンのガウァンラズとクラン・ルズラゲの略奪者(predatory troops/damrad dibeirgi)、これらはコンの半分における激闘の金床と柱の恩寵篤き双方であるがゆえに、腹立ちや口論や諍いが彼らの間で起きた場合に激怒や憤怒に対して備えるために二人のフェルグスの貴族はアリル・フィンの貴族の両脇にそれぞれ座り、アリル・フィンの貴族はフェルグスの貴族の両脇にそれぞれ座った。
アリル・フィンはフェルグスに彼ら二人は隣り合って座るべきか、それとも自分の貴族たちの間に座るかを尋ねた。「歓迎の価値とはその誠実さにあります」とフェルグスは言った。
アリルはそこで彼の寝所へ行き、王座に座って、彼の隣に座るようにフェルグスに言った。さてフェルグスはそのような扱いにとうとう満足しなかったのだが、それというのもどのような会合に在っても王でさえフェルグスに諮らないで他者に命令を下すことを敢えてしなかったからであり、そしてガウァンラズの高貴で名の知れた王、アリル・フィンの宮廷に来るまでは彼(フェルグス)が座している前では誰も玉座に座ろうという者はいなかったからだった。彼は誰にも彼自身の座を譲ろうとはしなかった。しかしフェルグスについてはその座を彼に割り当てた。なぜならこの不敬のため(その支配者を)懲らしめると心に決めていたので彼は序列の問題についてアリルと言い争うつもりはなかったからだ。
しかし(さらに)問題があった。彼らは飲み、陽気になって、アリル・フィンとフェルグスは愉快な会話に興じていた。アリルはフェルグスにどういう理由でこの度はイルス・ドウナンへとやってきたのかを尋ねた。
「わたしは武器と甲冑の手助けをあなたとガウァンラズから得ようと来ました。そしてあなたから手厚い知遇を得るために」
「それは私たちが聞いていたような目的とは違いますな」とアリルは言った。「あなたは尋ねられたことにはどのようなことでも隠し立てをしないとも巷間に言われている」
「それはどのような意味ですかな?」 「私が耳にしたのは」とアリルが言った。「それは私の妻のためにあなたが来て、同意があるにしろ力づくにしろ、彼女を連れ去るためだと」
「否定はしない」とフェルグスが言った。
「できるものなら否定されたほうが本当に良かったのだが」とアリルは言った。「しかし、こちらをごらんなさい、もしそのようなふるまいをなさろうというのなら、フェルグスよ」とアリルは付け加えた。
「この会話を誰にも話してはならぬ。しかし虐殺の砦を経て試合の浅瀬へ明朝行け、御者を連れてだ、そして我ら二人のうち生きて帰った者が婦人を手に入れるのだ」
「承知した」とフェルグスは言った。彼らの事件はこのような成り行きだった。

ブリクリウに話を戻そう。彼はほろ酔いの程度を過ぎると、家の全てを見回した。そして彼はフェルグスとアリルの顔が怒りで紅潮するのを見た。彼は自分のしでかしたことへの後悔に発作的に苛まれ、彼は家から出て行った。そして彼はその場に東西南北を埋め尽くす戦闘隊列の部隊と武器を携えた軍団を見た。これを見ると彼は中に入ってアリルにこれらの戦闘大隊と武装した大軍団が現れそこら中を埋め尽くしているのは何なのかを尋ねた。
「これらは私の部下、私の郎党です」とアリルは答えた。「彼らはサウィン祭を明朝祝うために来たのです」
そしてブリクリウは再び出ていき、南に大軍を見た。大軍、すなわち彼らは暗く密集した隊列でとても大規模であり、銀の飾り紐が周りについた茶色の外套をまとい、幅広の毛織の上着を着て、幅広の灰がかった青の剣を抜き身で手に握り、長い柄で屈強な英雄の握りには細身のとても鋭い槍と茶色の幅広の房がついたとても大きい盾を携えていた。堂々として落ち着きのあるとても背の高い若者たちがその完璧に統制が行き届いた一団の前を行進して、アリルが彼らに気付くと、この時に以下のように作詩された。

    一団が城に近づいてくる
    彼らは引くことを知らぬ男たち
    茶色の外套をまとい
    同じ色の盾を携えている

    英雄の力を持つ暗い男たち
    太陽の下で白く輝く上着
    黒い顔色の背の高い男たち
    彼らは大いなる海を越えてやってきた

    彼らの手には灰色の剣
    それは戦いにおいて死の一撃を与える
    旗付きの槍、とても大きい
    とても背の高い男たち、異論のあろうはずもない

    私はその軍勢に気付いた
    彼ら気高い魂の男たち
    (海を)越えてきたエフタハの息子アンガス
    そしてアランの若い戦士たち

    彼らは相手に戦うには厳しい男たち
    彼らの守りは得難く
    これらの男たちは殺されないだろう
    芝が彼らの血で浸るまで

    (一団が)いる

それからブリクリウは進み出て、その芝地をすっかり見渡した。そして彼は大きな一団が緑地の一角に座っているのを見た。彼らが二百人はいるように見えた。彼らの半分は飾り紐付きの一色の紫の外套をまとい、残りの半分は緑の地色の異なった色の外套をまとっていた。かれらの中央には美しく曲がった髪の、落ち着きをはらった、顔立ちの整った赤ら顔の舌たるい男がいた。アリルは彼らに気付くと、以下の詩を作った。

    そこに平原に兵隊がいる、
    そこは彼らが見える。
    およそ二百を数える、
    武器と多くの盾を持って  

    紫の外套をまとう百人
    誉れ高き顔立ちの整った者ども
    緑の外套をまとう百人
    美しくまことに雄々しい者ども

    その手の(方向に)一人いる
    世界で最も美しい男たち、背の高い英雄、美しい髪の、そして旋律の美しい発音の。

    あれは偉大なムレダハ
    アリルの息子、多き彼の軍勢
    命ある限り彼は逃げないだろう
    そうでなければ彼は変心した男になる
  
    そこにいる

その詩のあと、ブリクリウは再び芝地に出て行って、自分の周りを見回した。そして彼は大勢の人々と隊列をなした戦闘部隊がその場に来るところを見て驚いた。彼は中に戻ってアリルに言った。「今、西の丘に大勢の一団がいます。かれらは四百人はいるように見えます。その軍勢の前には指導者の衣装をまとった五人の茶色の髪の目を引く英雄がいます。大軍の後列には輝く鎧を着用したまっすぐな明るい茶色の男がいます。一方で戦士たちの真ん中に、彼らを指揮する平たい頭の、曲がった髪の、穏やかな口調の美しい肌をした男がいます」
「私はあの他の兵隊たちを知っている」とアリルは言った。そしてこのように彼らが喋るようにブリクリウは作詩してアリルはこれに答えた。

    その丘のにいるもう一つの一団
    彼らは東から来たのではなく西から来た。
    狩猟を求めている軍勢
    彼らの紫、血の赤の陣立て

    その兵団の先頭にいる
    五人の英雄、獰猛な槍。
    後尾にいる、少し離れた場所
    荒々しいまっすぐな明るい茶の若者。

    兵士たちの真ん中に
    背の高い高貴な――若者
    あらゆる事態に決断することに相応しい男、
    エリンの宮廷で起こりうることの。

    彼ら全てガウァンラズ
    シドガルのガウァンとともに。
    その支配と善の気質は絶対であり、
    そしてその兵隊は最も凛々しい。

    もう一つの一団がそこにいる

それからブリクリウは再び芝地に出て行って、全ての方向をじっくりと見続けた。そして彼は勇ましくとても大規模な群衆、ぎっしり並んだ隊列、美しい外套の一団、そして果敢な大軍勢を見かけた。彼はとても恐ろしくなり、再び中に帰っていった。アリルは尋ねた。「なにか知らせは、ブリクリウよ」 「ございます、まことに」とブリクリウは応えた。
「というのも海の砂、森の葉、草の露、緑地の草を数え上げるまでは、この城の緑地に今いる軍勢、武装した兵隊たち、徒歩の勇士たち、王の闘士たち、そして傭兵たちを数えきれませぬ」
「これらは私の部下だ」とアリル・フィンは言った。「彼らは翌朝の祭りを開くために来たのだ」
そしてブリクリウは再び出て行って、南西の芝地に兵隊を見つけた。そして以下がブリクリウが言及した彼らの描写だ。

    ここに強大な一団がいる
    良い姿で厳格な男たちの。
    彼らの顔色は輝き――
    四百と十二が彼らの人数

    どの勇士の左手にも紫の盾
    挑まれ得なかった長の。
    その貴公子たちの王冠に、
    緑一色の穂ども。
  
    一隊の前にいる暗い男
    彼の郎党は四百の君子から成る。
    二色によって安息地の主は見分けられる
    白い肌、血の赤のような紫の顔。
  
    これらはフィンの一族
    ――
    レアのフロイフに伴う
    その強大さはあなたが彼らを見たように行進するだろう。

    そこにいる

ブリクリウは(再び)芝地に行った。そして彼は辺りの四方を眺めた。大軍勢がその場に近づいているが彼らの行く先はわからなかった。そして全て一色の短い外套を着て、汚らしい兵士たちの肩に背負われた茶色のとても長大な盾を備えた、暗く背の高い人々の北部からまっすぐに来る大軍と彼は見た。規模と戦士らしい振る舞いにおいてこれらに及ぶ者はそれまでその芝地に来なかった。ブリクリウは彼らを描写するようにこの詩を作った。

    これは最も大いなる一団
    偽りなき真実の。
    今までやって来なかった
    彼らに挑もうという兵は。

    前の一隊には
    四百の落ち着きのある勇士たちがいる。
    後ろの一隊には
    四百が同じように目立っている。

    そこには別に四百人がいる
    背が高く獰猛な勇士たち。
    どの戦士も相応しく武装している、
    中央の大いなる一団では。

    どの英雄の背中にもある盾
    斑模様でとても大きい。
    あまりにも重すぎる石があり
    どの白い盾にも取り付けられている。

    これらは北部から来た人々だ
    アサロイー(Assaroe)の国境から
    エイと、等しい力のアンガス
    黒い脚のクルナンの二人の高貴な息子たち

    最も気高い勇気の一団
    それは素晴らしい形で来る。
    より大胆で力強い者どもはいないと
    あなたに宣言する

    これは。

ブリクリウはもう一度進み出て行って、芝地を一面に見渡した。そして彼はおよそ二百人の見知らぬ奇妙な兵隊たちが北から最初の一団を追って来ているのを見た。どの英雄も槍を持ち、どの闘士も彼の盾のくぼみにとても大きな石を備えていた。戦士たちの中央にはサフランのように黄色の編まれた巻き毛で髭の無い勇敢な男が行進していた。ブリクリウは中に入り、アリルにこれらの知らせを伝えた。そしてこの詩が彼ら二人によってつくられた。

    あの軍勢をご覧になるあなた、
    あなたの槍の指す方向に彼らをご覧になってください。
    もしあなたが彼らをご存知なら、教えてください
    平野にいるこの大軍がなになのかを。

    私に言葉で描写してみよ、頑固なブリクリウよ、
    戦士たちの特色のある身なりを、
    私がそなたにしてやれるように
    それぞれの特徴についての説明を。

    私は彼らを二百人の獰猛な戦士だと判断しました。
    他の兵団の者どもよりも背が高く
    彼らの赤い盾、彼らの黄色い髪
    北部から彼らはやってきました。

    二百振りの幅広の槍を携えています
    戦いのさなかに彼らが飛び込めるように。
    二百個の重い勇士の石を携えています
    彼らの彫り込まれた盾に取り付けられて。

    一人の背が高く髭がない吃音の戦士
    あの軍勢が周りを取り巻いて座るのが彼です。
    彼の頭上には流れるように
    美しく滑らかな髪。

    これらの者どもは、伝えよう
    ムイグ・エウェの騎士たちだ。
    その背が高い男は、偽りのない矜持(の持ち主)、
    見目麗しき赤のダラの息子フェルウェンだ。

    彼らに挑む者に対する彼らの戦いは、
    いつであろうと彼らの憤激が起こる。
    本当に幸運なその貴族は
    彼らが武器を共に取ろうという者よ
  
    あなた。

さて、アリル・フィンについて。彼自身はフェルグスにとって快適であるよう努めた。そして彼にこのように言った。「どうしてこの国に来たのだ、フェルグス」とアリルは尋ねた。
「もうすでにお聞きになっただろう」とフェルグスは応えた。
「このような場合には私は私の不都合なものに富を分け与えない」とアリルが言った。
「私は、例えば、あなたの食べ物も酒も味わうことはない」とフェルグスは再び答えた。「なぜなら私は食べ物を共にした(人)を殺さなかったからだ」そしてフェルグスは出て行った。
アリルはフェルグスにささやいた。「これをガウァンラズの耳に入らないように。けれどそなたは早くに試合の浅瀬に行き、そなたの御者以外には誰にも知らせてはならぬ。そして私の御者を除いてはそのことは私から誰かの耳に入るということもない。戦おうではないか、そして我らのうち生き残ったほうが婦人を手にするのだ」
フェルグスは出て行って、ドゥブサハとアンガスを踵(ほどのすぐ後ろ)に引き連れた。
彼らはなぜ彼が激怒しているのかを尋ねたが、彼は彼らに伝えたがらなかった。そして彼は誰にも話さないように迫った。彼はそれから彼らに話した。
ドゥブサハは(フェルグスに)彼自身がアリルと決闘できるように求めた。彼は彼に相応しい敵では決してないので、フェルグスはこの問題で(アリルと)決闘するという考えを捨てたといった。そしてこの詩が彼らによって続けられた。

    フェルグスよ、あなたは遵守するのか
    全ての恐ろしく激しい諍いを?
    どうしてあなたは引き受けたのか
    おれに先駆けてこの闘争を。

    彼と戦うのはお前ではない、
    彼の男はお前の身分に属さないのだ。
    彼を助けることがお前に適した務めかもしれないが
    (彼の傲慢さに)報復することではない。

    アリル・フィン、威厳のある君主、
    アイルランド西部のエリスの君主、
    相応しい相手ではない、
    アルスターの高名な王には。

    おれはこの切っ先が鋭い槍を投げるぞ、
    フェルナスの浅瀬のアリルに向かって。
    戦いにおいて俺に匹敵する者はいない、
    フェルグスよ、あなたを除いては。

    フェルグス。

フェルグスはそこで宿舎に行って、夜を過ごした。彼は早朝に起きると彼の随行者を起こし、馬を確保させ戦車をつながせた。彼らは早くに到着したが、浅瀬にいるアリルを見つけた。
そして二人はとても鋭く、力強い柄で、たやすく投擲できる武器を互いに向かって振るい、そして獰猛ながらも決着のつかなかった攻撃を繰り出した。
その戦士たちは武器を巧みに操り、英雄たちに黄昏の影が降りるまでは傷も血も君子たちにつかなかった。
ドゥブサハとアンガスはフェルグスが前に進んでいったのを確認すると、武器を掴み、浅瀬に突進した。彼らは浅瀬で戦っている勇士たちを見つけて、どちらもアリルに突きを放ち、アリルはそのどちらにも突きを放った。コンホヴァルの息子コルマク・コンロンガスとコナル・ケルナッハの息子の輝く胸のウアスネがフェルグスが出て行ったのを見た。そしてコルマク(とウアスネ)は進んでいった。彼らは戦っている英雄たちを見て、その途端に彼らに近づいて行った。そしてアリルに突きを放った。ウアスネはもう一度彼に突きを放った。そしてアリルは彼らの両方を負傷させた。ルアズの息子ビルジェグとエオガオスの息子エダルとフィラバの息子フイアフがそれから前に出て、どちらもアリルに攻撃した。そしてアリルはそのどちらの力強い男たちにも重傷を与えた。それからルイルグネハの息子ゴヴネンとコルマクの養子兄弟、サルガバの息子スアナハとD――の息子ルガズ・ラヴジャルグとエズガトの息子シス――が戦いの現場に出て行って、彼らの誰もがアリルに攻撃した。そしてアリルは彼らの誰をも負傷させた。
「どうしてですか、アリルの従者さん」とフェルグスの従者は言った。「貴方の強大な主人に今いる恐ろしい窮地のことをお伝えしないのは」
「それは私の誓いなのです」と若者は応えた。「戦いが互角である間はそれについて何も言わないというね」
そして彼らは獰猛な姿で夜の終わりから午後いっぱいまで戦った。それから高く掲げられた剣のぶつけ合い、兜に当たって刃がカチンと鳴る音、暴風を切り裂く槍の鋭い音が宿営地中に聞こえた。その騒動はクラン・フィダハの天幕まで聞こえた。これらの人々は獰猛に怒り狂い勇猛果敢に見境をなくして起き上がって、慌ただしい動きとのしのしという闊歩が天の雲、粗い岩や木々の洞にまで響き渡った。彼らが立ち上がった時の、その狂暴で危険な切迫し絶え間ないガウァンラズのうなり声。彼らが甲冑を身に着けた時の戦士のその――。突然目覚めた時の若者の叫び。渋々起き上がった時の若者の渋面。彼らが武勇さを示し、随行者を駆り立て、戦いの狂気を発揮するために軽い足取りで急ぎ、ドゥブロンガスに敵意をむき出しにするときの勇士達の扇動と訓戒。
彼らは槍の切っ先を高く掲げ恐ろく密集した隊列で、そして荒々しく動員された断固たる戦闘部隊で、そして赤い旗を示して敏捷な兵としてとても迅速に行進して戦いの場と激しい応酬の現場に到着したのだった。
それからドゥブロンガスたちは獰猛に恐ろしげに必死に鉄壁の布陣で集まった。そして彼らは荒々しい勝利に餓えた鋼鉄の刃をかざし勇ましく畏怖させる密集陣形と、厳格で英雄的で勇ましく分厚い柄を林立させた英雄的で荒れ狂う幅の広い防御陣形、薄暗い紫の危険で運命的な赤い切っ先の杭を並べた柵のような陣形を編成した。彼らはそのような隊形で大勢で密集し飽くことを知らぬ大身の槍を掲げ、――、そして選び抜かれた強力で武勲赫赫たる堅固な陣列で行進し、あの浅瀬の東の隅の広々として踏み鳴らされた野原にたどり着いたのだった。
彼らとガウァンラズは互いを見て勢いよく勝ち誇って叫び声をあげ、繰り返される口上は雲まで届くほどであった。そして軍勢の頭上をとてつもなく猛烈な繰り出される槍の雨と切っ先閃く死に至る有毒の投槍が発せられた。
そして太い柄の勇士の戦闘用の槍がねじれ、柄は間借り、戦闘用の盾に対して木っ端みじんになった。壁は騒動に震えた。そして甲冑は滅多切りにされて短くなってしまった。英雄たちは力強い胸板を切り裂かれた。頭は兜ごと割れた。髪は彫りのある剣でよじれ、目は地面をたっぷりと浸すほどの血の赤く激しいに飛沫によって見えなくなった。その戦いはすぐに一騎打ちと衝突の連続となって、そのために当事者から離れていても野原の一面で勇ましい兵士たちの襲撃、勇士たちの敢闘、王冠を被った貴公子たちの攻勢、君主たちの怒号、危険に対して注意を払う兵士たちのどよめき、勇敢な歩兵の剣戟が聞こえた。
若者や見習い戦士たちの闘志と熱意。幾多の切り傷を受けた屈強な男の憤怒。平民に向ける豪族たちの傲慢さ。戦いや心震わす突撃に臨み、英雄たちを鼓舞する貴族たちと将校と戦士たちの大音声。
さて彼らの陣営が他陣営に接敵すると、フェルグスとアンガスとドゥブサハはアリルただ一人に対して盾で殴打し突進し、彼は三度盾で彼らに殴打し返した。フェルグスは後ろに飛びのき、戦闘用の槍をふるってアリルの腰帯の下を傷つけた。アリルはとてつもなく幅広の槍を柄を握り、振るって突き、正しく勇敢なフェルグスを負傷させた。ドゥブサハとアンガスはアリルを負傷させ、彼は仕返しに槍の突きで英雄たちを多量の出血させるようにもくろんで彼らを負傷させた。
ガウァンラズはアリル・フィンが放った一つの盾のこれらの三度の殴打をはっきりと聞くと、エリスのガウァンラズの獰猛な騎士たちの華、つまりシドガルのガウァンと彼に付き従う彼の二人の兄弟のガウァンたちが仕返しをした。三人兄弟はフェルグスに彼らの盾でとてつもなく決定的に見えたが決着をつけられなかった殴打を繰り出し、彼らは彼に怒りと戦果?で接敵した。(他の)ガウァンラズの同じように強力で勇ましい三人の男が戦いに加わり、そして全ての貴族に知られているあの上王に三度の荒れ狂う素晴らしい攻撃を加えた。
しかし傷ついた男たちに飛びかかる時の死肉を漁る鴉や群れをなす猛禽と鳥の一団、死肉と臓物に餓えた犬の群れの遠吠え、野鳥の気配、空を飛ぶ鳥の羽音が聞こえる戦いに参加することは恐怖の源だった。なぜなら、ちょっとした場所でも多くの戦士たちが痛ましく負傷し、多くの勇士たちの遺体が散乱し、英雄たちは手をズタズタにし、君主たちは死に、長たちは致命傷を受け、貴公子たちは敗れ、自由民は胸を切り裂かれ、豪傑は切り刻まれ、兵士たちは血まみれの外套を着て頭を切られ、目は片方潰れ、唇は閉じられ土気色になり、目が回り、息も絶え絶えであり、膝はよれよれに交差し、脚はみじん切りになっている様子を見ることができたからだった。そのため猛烈な会戦の後にはその野原では領主たちや下男や、折れた柄の槍と削られた剣と割れた兜のがっしりと武装した密集した精強な一軍団と折れた剣の紫の小道(敗走した軍勢の暗喩だろうか?)と裂傷を受け泡を吹き血まみれの遺骸で不吉な絶え間なく騒がしかった。虐殺は拡大し、槍と剣と戦いの盾と、おぞましくはれ上がって(?)横たわった様子で、切り刻まれバラバラになった遺骸と重い戦士のこわ張った死体と死んだ気高い兵士たちと従者たちの余りの多さのために野原は通行できなくなった。
これがこの戦いでガウァンラズによってされた虐殺であり、そこでは少なくとも千はくだらないほどの、ドゥブロンガスの数えきれない軍勢が命を落とした。
さて今やフェルグスが彼の軍勢が殺害され破滅とガウァンラズが彼らに勝利しているさまを目の当たりにして、彼は武人魂を発揮し、重い剣を振るって屈強な男たちを倒し、握りしめた槍を巧みに扱い、槍を投げ、君主たちを貫き、体を両断し、兵士たちを倒し、盾を分断し、攻撃を狙い、憤怒を奮い立たせ始めた。歴史家たちによればフェルグスの怒りはくるぶしまで血で浸るまで頂点に達することはなかった。彼は彼の剣カラドボルグへと手を伸ばし、そして鞘の中にそれが収まっていないことに気付いた。そしてこれがそのあらましだ。ある日彼がメイヴとクルアハンのハシバミの樹のそばで戯れていた時に、アリルはその振る舞いを目撃していた。そして彼はカラドボルグを鞘の中から抜き去り、代わりに木剣をしまっていた。フェルグスがこれに気付いた時、彼はコノートの人間が彼を侮辱するためにやったことだと思った。それで彼は、コルマク・コンロンガスに戦いから連れ出すことが可能な限りの彼の軍勢を引き連れて離脱するようにとブリクリウに行かせ、伝えさせた。
「だが、私自身は生涯あるいは我が道を一歩たりとて退かぬ」
ブリクリウはアルスター勢のもとに行って彼の伝言を彼らに伝えた。コルマクはそれからガウァンラズの軍がはるかに優勢だと見て取るとその戦いから手を引き、彼の兵の撤退を支援した。
しかしフェルグスについて、依然として彼とドゥブサハとアンガスはアリルを盾で攻撃していた。シドガルのガウァンがこれに気付くと彼らに近づきとても強力な突きをフェルグスに放ち、フェルグスは彼に猛烈な突きを放った。ゴル・オレフとゴル・アクラは彼らに挑戦し、フェルグスに突きを放ち、フェルグスはそれぞれ報復の一撃をどちらにも放った。それからエフタハの息子エイとエフタハの息子アンガスがどちらもフェルグスの盾に突きを放ち、彼は彼らのどちらにも突きを返した。それからガウァンの息子デュバンが彼に向って突進した。彼はフェルグスに刺突の一撃を放ち、後者は即座に反応して仕返しをした。そこでブレフネの七人のブレスレンたちが皆で一度に彼に挑戦し、だれもが彼に一突きしたがフェルグスは彼らのどの豪傑に堪えたのと同じようにやり返した。
そして今や全てのガウァンラズがこのようなやり方で彼に攻撃を加え、彼らの最後にフィダハの息子フロイフが現れた。彼が到着するとフェルグスにこれ以上攻撃を加えることを許さず、ガウァンラズに彼を捕虜にするように命令した。彼らはすぐさま彼を取り囲むと鎖と枷で彼を拘束した。彼らはその王家の戦士をこのように厳重に足かせをつけ拘束した。彼らはアンガスとドゥブサハをも捕らえた。付け加えると、フェルグスとアンガスとドゥブサハがこのように捕虜になると、彼(アリル?)はガウァンラズの戦士団にコルマクとドゥブロンガスを追跡するよう命令した。ブリクリウはフェルグスとドゥブサハとアンガスが捕虜にあれ、彼らの軍勢が虐殺された様子を見て、彼の心は平静さを失った。彼の下の脚は震えた。彼の指は麻痺した。彼の心臓は激しく鼓動した。彼の感覚は失われ、視界は歪んだ。彼は服の裾を持ち上げてその場を急いで去った。彼は軽やかに迅速にその野原から旅をして、低木、緑地、水場を越えていった。そして彼はクルアハンの砦にたどり着くまで疾走をやめなかった。
(上記の描写はスウィニーの物語における描写に酷似している)
そして上等にしつらえられた祝宴が開かれている屋敷の中で彼は面前にメイヴとアリルに面会した。たどり着いた途端、彼は身を投げ出して床に命を失った死人のように体を横たえた。メイヴとアリルは彼に知らせを求めた。それから彼は彼らに、ドゥブロンガスが荒々しく殺され、フェルグスとドゥブサハとアンガスが捕虜になっていると話した。
「それで、あの遠征に出かけたウラズの民の男や女たちのただ一人の生き残った息子は私だけなのです」とブリクリウは行った。
「そのような真似をしでかしたのはいったい何者ですか」とメイヴは言った。
「そしてあのような気高い男たちと大勢の軍と勇士たちの虐殺をたくらんだのは誰なのですか?」
「そこでは誰も見かけませんでした、本当のことです」とブリクリウは言った。「あの王の軍勢を除いては。そして彼らよりも勇猛さあるいは強大さ、数において上回る王の親衛隊というものを見たことはありません。そしてメイヴ、あなたが我らを見捨てないならば」とブリクリウは付け加えた。
「ドウナンの者どももガウァンラズたちも我らを意のままに害することはできないのですが」
そして彼らはこのように喋るように、彼らは詩を詠んだ。

    このようなありさまで、永遠なるブリクリウよ
    苦難の旅とはいったいどううしたことですか?
    あなたの白い唇は殆ど
    墓を思わせる予兆のようです。

    酷い知らせがあります。
    私たちは不利を負いました。
    全てのウラズ人は死んでしまいました、
    ルズラゲのロスの子とともに。

    誰がそのようなことをしでかしたのか、誰がやったのですか、
    誰が強打したのですか?
    そなたたちの勇敢な戦闘部隊を考慮するに、
    誰がそなたたちを虐殺することができるでしょう?

    私は真実、誰も見ておりません、
    あの王の親衛隊を除いては。
    私は今まで見たことがありません
    もっと力強い王家の親衛隊というものを。

    この待ち伏せをたくらんだのはあなただ、
    私は面と向かって言いますよ、メイヴ。
    もしもあなたが私たちを裏切っていなかったというのなら、
    ドウナンたちの兵士が私たちを敢えて攻撃しなかったでしょうに。

    わたくしは本当に誓いましょう、
    五人の王の前で、
    わたくしがその公平な闘いを認めないと
    そしてアリルもです。

    もしこの災難の原因があなたでないのなら、
    あなたの戦闘部隊を召集しなさい。
    あなたの強さと勇気を示し
    そして裏切りには完膚なきまで復讐をするのです。

    このようなありさまに

さてアリルとメイヴはこれらの報告を聞いて深く悲しんでいた。そして彼らはエリンの四つの偉大な地方の貴族たちを面前に呼び出した。それというのも、アリルとメイヴがウラズのクーリーの牛を略奪をするためにこちらへと連れて来られていたので彼らがクルアハンにいたからだった。
そしてその場にいる偉大な長とはすなわち、クー・ロイの息子ルガズとルフタの息子フィンゲンの息子エオハズ、デザの息子ティゲルナハ・ティズヴァナハの息子エオヒズ・グスウァルと、彼の兄弟エオヒズ・フェイヴァルと、ノイシュの子ルガズと、フェヴィスの息子ローホと、ラゲンの王メスゲズラの息子アンガスと、ロスの息子フィンの息子マクニアと、エハハ・アインキンの息子アンガスと、フェルグスの息子イラン・フィン(ストークス校訂版ではノイシュを守ろうとしたがコナルに殺された)と、ケフトの息子コノザーと、ダル・ドルイスネの貴族たちと、エオハズ・ロンとクライヴァの人々、マガハの息子と、ムゼ・マーインと、レウァンの人々と、ウウォーの息子コル・アンオスナウァと、エルナの人々とマネたちと、タジィウの部族だった。
これらの貴族たちはアリルとメイヴのもとへ皆で連れて来られた。そしてメイヴは彼らにガウァンラズの非道と彼女の保護下にあったフェルグスと彼の部下が害されたことについて彼らに話した。彼女はエリンの貴族たちに共にガウァンラズへ彼女の名誉の復讐を遂げるために同行して欲しいと要請した。彼らはその遠征に出ることを引き受けた。そして彼らは実際に喜び勇んでそうしたのだった。なぜなら彼らの勇士や戦士たちは同行することで名誉や名声、特別であることを勝ち取れるだろうと確信していたからだった。それというのも、彼らが兵の数や彼らの英雄が優秀であることと武勇に優れた軍勢のために、この世には彼らに敵(かな)うような小部族はいないと高を括っていたからである。そしてメイヴはクー・ロイの息子ルガズと会談し、援助と助言を求め、(彼らは)以下の詩を詠んだ。

    ああ、ルガズ!
    適切な助言を教えてください、
    フェルグスが破滅してしまったのです、嘆かわしい!
    わたくしにとって大きな損失です。

    高貴なるメイヴよ!
    不名誉な男は弱々しく、
    そのため力もない者でもある、
    全ての法はその一行に悪をもたらす。

    勇気をもってこの使命を引き受けてください、
    あるべき物事が正しいように。
    彼に復讐をするべくわたくしたちの前衛に行軍しなさい。
    そなたの武勇を示すのです、ルガズ。

    ああ、ルガズ。

それからメイヴは立ち上がってタジィウの部族に馬に乗るように命令した。そして軍勢は戦闘隊形になって彼女に従った。そしてこのように部隊は並んだ。クー・ロイの息子ルガズとティゲルナハ・ティズヴァナハの息子エオヒズ・グスウァルはクラン・デザを率い、ノイシュの息子ルガズとフェヴィスの息子ローホとフィンゲンの息子エオガン・フィンはルフタの息子エオフの領地の兵を率い、ロスの息子のフィンの子マクニアと(二人のエオハズは兄弟?Eochaid Faebar agus Eachaid Ainchend mac Eachach)エオハズ・フェイヴァルとエハハの息子エオハズ・アインキンはガレーインの兵を率いて、メスゲズラの息子アンガスはラゲンの兵を率いていた。
彼らは計画を立て、駐屯地と進軍路を決定し、前進した。そしてこれがメイヴと彼女の貴族たちと騎兵が進んだ道だ。つまり、アイのなだらかな平原を横切り、トレブラン山の東を越え、クルアズ・ルアフラの頂上を通り、ブレアの黒い河を越え、フォーカルの末裔の土地の西部を通り、コンジャズの沼沢地を越え、センハンの古道とフォラナンの南方を過ぎ、暴れ河と呼ばれた黒い河の浅瀬を横切り、固い峰の終わりを越え、今、アルネの入江と呼ばれているアルターの子孫の入江の端まで来て立ち止まり宿営地を建設した。そして歩兵戦士たちと従者がキアラギの森を抜けて彼らに会いに進み出てきた。そして広い高地の東の領域を近道して、メイヴとアリルと他の地域(の軍勢)がいる場所にやってきた。彼らはその夜フェル(マン)・ドフラの息子のアルネの砦に宿営した。彼らは人々に放棄された宿を見つけた。しかし決して食料が払底していなかったのだが、それというのも彼らはそこで十分に行きわたるだけの食べ物や飲み物にありつけたからだった。
(メイヴの)軍勢は宿主に感謝を伝えることもなく、そこで豪勢な祝宴を楽しもうとそこに落ち着いた。そして彼らは全き夕べを穏やかに快適に過ごした。
夜になるとアルネの周りに彼の息子たちと部下が集まった。彼らはメイヴの部下たちから僅かな間をとっており、大軍に対して密かに攻撃を仕掛けることと非道に対して復讐して彼らを立ち退かせようと決意した。彼らは宿営地の周辺にやってきてメイヴの部下の百五十人の武装した勇士を殺した。それから彼らは安全に逃げおおせたのだった。宿営地は大いに恐慌してこのために警戒するとアリルとメイヴに報告したのだった。メイヴは絶対にこの凶行に復讐するだろうと言い、アルネは彼のもてなしによくも彼らによくも仕返しをしたものだと付け加えてこの詩を詠んだ。

    これは冷遇の食べ物だこと、
    アルネの黒が私にあたえたもの。
    彼の平和とは戦争です、
    彼は彼の残酷さをわたくしたちに負わせたのです。

    わたくしたちの軍勢の百五十を
    彼らが殺しました、多大な犠牲よ。
    奴らによってこの者どもが命を落としたといえど、
    わたくしによって彼らは末永く記憶されるでしょう。

    わたくしは誓って宣言いたします、
    わたくしは我が武器にかけて
    これよりわたくしたちは移動しないでしょう、
    この行いに六倍に復讐するまで

    これは

それからメイヴはアルネに対抗して監視しその軍勢を調査するためにマネたちを彼女の部下と近衛兵とともに送り込んだ。彼女はマネたちを精力的に駆り立て促した。彼らはその場を去り、アルネの行動を監視するべく前進した。それというのも彼と彼の部下は長たちを脅かし挑戦していたからだった。彼らはマネたちと戦い、そして両陣営に多大な死傷者が出た。
マネの部下の千の武装した戦士が死んだ。そしてドゥブ・ドフラの息子アルネ、そして強大な者どもに恐れをなして逃亡した二人の養い子のブレクとナネスグ(Nainnesg)を除いた彼の全ての部下が翌朝には命を落とした。
メイヴとアリルと全ての貴族たちは虐殺を見に行き、そしてメイヴは彼女の者どもが偉大であると褒めたたえてマネたちに謝意を表してこの詩を詠んだ。

    英雄の証がここにあります、
    わたくしたちの感謝をウラズの戦士たちに、
    ドゥブ――の息子アルネ
    彼の首級がここに両断されてあります。

    声名高きアリルは聞いたでしょうか
    マネたちの偉大な勝利を?
    強大な英雄の戦い、
    その果てには食べ物も衣服もない
  
    わたくしたちの楽しみのアルネは命を落としました
    わたくしたちは千人をすっかり殺しつくした
    彼は戦いを勇ましく戦った
    彼の惨状は今や悲しいけれども

    ここにあります。

彼の兄弟たちの墓と一緒に、彼の墓が彼らによってそこに掘られ、彼の墓石が立てられ、彼の墓所が作られた。彼らの頭と脚は湖に投げ入れられ、それ以来その名はアルネたちの水辺と言うようになった。そして彼らは水辺と宿場を見渡していると、その間にメイヴは王家の宿場について話をして、それを克明に描写したのだった。そしてそのようにしている間に彼女は詩を詠んだのだった。

    アルネの屋敷よ!
    彼の人々は敵対的だったけれど。
    そのように見たのは僅か
    今ここにいる者どもを除いて(?)。

    五十の鼎がそこで煮立っていた、
    五十の大樽を饗された。
    壁の内側には収容することができた、
    四と四百人もの客を

    ――その王の二人の息子、
    ブレクとナネスグの二人とも、
    彼らは五十人に一戦した、
    形勢が不利な時に

    わたくしのその宿場についての証言とは
    膨大な数の家族がいるアルネの屋敷、
    わたくしの治世の間に誰もいない
    満足せずに入らなかったものは

    屋敷よ

その後、彼らは停止も休むこともなく前進して、ついに彼らはモハー(Mothar)の東側の境界に、そしてサナスの平原の西を過ぎて、スミスィーの湖のそばにたどり着いた。その時彼らはドラーの息子のジャルグの娘ノフタの砦に宿営した。そしてノフタはエリンの軍勢に戦いを挑んだ。彼女が彼らに挑んだ戦いとは、今ネヴァン・オ・アウレイと呼ばれている見晴らしの丘の頂上まで
競争することだった。彼らはそれから彼女と競争した。そして競争の途中で彼らが動けなくなるものならそれぞれのところへ戻って、彼女の剣の一撃を見舞い、首を刎ねるのだった。
このようなやり口で彼女は九人の九倍、つまりアリルの息子エオガン・ガーと彼の随行者たちを殺した。メイヴは彼らをノフタから救うようにクー・ロイの息子ルガズに相談した。
ルガズは彼女と競争してとうとう上り坂の真ん中に着くと、その時ノフタは動けなくなった。
彼女がそうなった時にルガズは転回して一撃で彼女の首を体から切り離した。彼はそれをメイヴのもとに持って行った。メイヴはその場で喜び、そしてルガズに賞賛を与えてこの詩を作った。

    そなたのなんと誉れ高き功業よ、ルガズ!
    わたくしの愛しい人、わたくしたちが彼の下で進軍する英雄。
    わたくしたちの者どもの死は全くの敗北でした。
    九つの九の三倍の人が切り捨てられました。

    九つの九の三倍の英雄が
    丘の頂上を目指した(?)。
    誰も逃れられなかった
    邪悪なたくらみのジャルグの娘からは。

    円丘の西の塚には
    者どもの遺骸が遠く間を置かず安置されている。
    九人の勇士、彼女の餌食たちがいる
    彼女の住処の近くにある彼女の首級の上に
  
    エオガン・ガーを殺した女
    アリルの息子、九つの九人、
    ああ、軍勢の半分を率いる(?)ルガズよ
    そなたの手による彼女の死は偉大な勝利です。

    誉れ高き功業よ

ルガズはメイヴによるこの賛辞に喜び、そして彼らは翌朝にアース・フェンのアリル・フィンの砦を目指してそこを発った。
彼らは同じ数の七つの勇ましい戦闘部隊に編成された。
そしていくらか紫の盾で、そして別の一色は滑らかな緑の盾、他に暗くとても長い編み模様の盾、他に頑丈な板張りのまだらな黄色をした盾、そしてを堅い木の鋭い様々な色をした盾と、いくらかは青く鉄灰色で金糸が編まれた剣、他には細い灰色をしたなめらかな刃に形作られた剣、他には重く強い幅広の刃をした剣と、分厚い柄で鋼鉄の切っ先の五尖槍、他に美しくよく仕上げられた金の穂先の槍、他にはよく焼き入れされた鋭い切っ先の長槍、そしてよくあつらえられた三つ編みの鎖帷子、そして飾り立てられた格好の良い兜、そして英雄に相応しい具足一式、そして戦闘用メイスと、手柄用の鉤(おそらく首を提げるため)と、戦争用の投槍で武装して、ひどく好戦的で色が斑模様な列を成した。
壮観なりしは、金と銀と水晶と柘榴石で飾られて、青と紫、緑と黄、斑色などの多くの様々な色や衣を染めた他の全ての色の衣装をまとった戦列の美しさと威風、そして現れた大軍勢。
彼らのあまたの刃鋭い武器、薄紫や様々な色をした異様で恐ろしく広く翻る戦旗、戦車の轟音、重装歩兵の足踏み、大軍勢の喚声を見れば恐れ慌てふためくには十分だろう。

アリル・フィンの部下の偉大で勇敢な兵、強大なトルナが現れるまで彼らがその場にいるのはそう長くなかった。彼は彼らに戦いを挑んだ。六人の下郎、つまりクー・ロイの息子ルガズの指揮下からトルンとマイルが、アリルとメイヴの指揮下からはメロンとミズナが、ロスの息子フィンの一団からはルブネとロダンが挑戦に応えた。そして六人の下郎は重い――と分厚い柄で幅広の穂先の槍と大きな鈍色の剣を携えて激しく果敢で暴力的で狂ったように果てしなくトルナと戦った。そしてトルナは下郎たちに対して元気よく巧みに勇敢に機敏に戦いを立ち回った。
彼は彼らの周囲を鷹が空飛ぶ鳥を旋回するように回り、彼らをひとまとめにして瞬く間に六人の首を斬り離したのだった。それから彼は目の前にいる者どもに攻撃をしかけ、彼の憤怒を彼らに浴びせた。彼らはその一方で彼を取り囲み、槍で彼を殺した。彼の墓はそのあと掘られ、彼は弔われた。そして彼らはそれ以来トルナの塚と呼ばれているとても大きな塚をその上に作った。

エリンの者どもはアース・フェンへと進軍して、そこで停止して宿営した。ゴル・オレフと彼の七人の息子と彼の名前の三百人の勇士が襲撃し、すぐさまその軍勢の多くを殺した。彼はこの場で百人の武装した屈強な戦士を殺した。ドゥブロンガスたちが聞きつけ一団となってアリル・フィンに攻撃するだろうと、アリル・フィンの要塞はクー・ロイの息子ルガズの攻勢に晒された。エリンの者どもは、クー・ロイの息子ルガズと彼の指揮下のエリンの者どもの半分とメイヴと残りの半分を形成する彼女の軍勢の二手の戦列で城を包囲するように分かれた。
そしてゴル・オレフは彼らに朝まで激しい投石を降らせ、彼らに睡眠も休息も許さなかった。そして彼はメイヴの二頭の馬を殺し、そこからこの場所はエフ・オレフ(オレフの馬)と名づけられた。
朝になりそれから彼らはフェムダルの円丘に行ったが、その間にもゴルと彼の貴族たちは彼らを殺しまわっていた。二つの戦列はその夜分かれて宿営した。クー・ロイの息子ルガズは過ぎ去る川に、メイヴは石の塚に。フェルウェンと彼の父ダラ・ジャルグが三千の兵でマンスター勢とクー・ロイの息子ルガズに攻撃をした。フェルウェンはマンスター勢に獰猛に石で戦い、戦士たちはその夜は飲食も微睡むどころか一睡もできなかった。ダラ・ジャルグと彼の息子はゴル・オレフがやったように石で戦ってその軍勢を悩ませて彼らに同じような被害を与えるよう尽力した。そして彼らは数えきれないほどの人数をその夜の戦いで殺した。その夜にメイヴが宿営した円丘は戦う者同士が互いに放ちあった巨大な石から石の円丘と呼ばれている。そしてその砦は赤い臓腑とそこから流れ出た赤く深い血だまりが流れたことから赤い砦と呼ばれた。
彼らは翌朝になって移動した。しかし多数のガウァンラズが彼らに追いつき、距離を開けさせなかった。そして彼らが殺した人は五十の恰幅の良く背の高い特別な戦士たち、英雄的な戦士レガンと彼の部下であり、彼にちなんでそこはレガンの流れと名付けられた。彼らはその夜には会合の円丘に宿営した。エリンの四大地方の兵が会合したことからその名がつけられた。

ゴル・オレフはその夜はエリンの軍勢から離れ、アリル・フィンとフェルグスがいるドゥン・フリダスへと行った。それというのもフェルグスはアース・フェンの戦いで囚われてフリダスの居城に連れていかれたからだった。そして彼はフリダスのいる宮殿のとても大きな柱に縛り付けられていた。そして彼らは彼を毎日の朝食の時に女王への晒しものにしていた。フェルグスは彼がそれまで置かれたどのような苦境よりもこれに怒りを感じていた。そして、大規模な宿営地の若者と子供たちは、彼の周りに群がって、彼を嘲笑の対象にして、馬鹿げた嘲笑と笑い声を上げ続けた。
ゴル・オレフはアリルとフェルグスがいる屋敷への道を行き、彼らにエリンの四大地方の兵が彼らの領地に侵入したと話した。アリル・フィンはゴル・オレフに、エリンの軍勢の貴族たちが来ていたのか尋ねた。ゴルは彼に話して、この詩を語った。

    あなたの敷居のここに彼らはいます、
    アイの平原から来た戦争の装いの屈強な男たち、
    互いに連携する七つの戦闘部隊
    エリンの四大地方の

    自分の領地からきたアリルとメイヴとともに、
    七人のマネたちの下のマクネ(親族)たち。
    戦いの猛犬の息子ルガズの下に、
    そしてマガハの七人の息子の下に。

    メスゲズラの息子アンガスとともに、
    ガレーインの軍勢、その容姿は見目良い。
    ロスの息子の息子アンガスとともに、
    そしてフェルグスの息子イランとともに。

    自分の領地から来たエオハズ・グスウァルとともに、
    ティゲルナハ・ティズヴァナハの息子。
    エオハズ・フェイバルとともに、足を踏みならす、
    そしてエオハズ・アインキンとともに。

    南部からノシュの息子ルガズとともに、
    モダ・フェビスの息子ローホ・モールとともに、
    あなたに敵対するクー・ロイの息子ルガズとともに、
    フィンゲンの息子エオガン・フィンととに。

    そこにはコルマク・コンロンガスがいます、
    付き従う三千の兵とともに。
    ウラズの亡命者たち、一人しか欠けていません
    彼らがそこにいますと、あなたに知らせます。

    彼らがいます。

ゴル・オレフがこの詩を作った後に西からエリンの軍勢へと舞い戻り、そして彼らに獰猛に攻撃をしかけたので彼らの多数がその夜に命を落とした。
エリンの軍勢は翌朝に会合の円丘へと退いた。そこでガウァンラズたちは彼らを包囲し、進軍することも停止することも許さず、彼らを熱によって度重なるように苦しんでいる牛のようにした。エリンの軍勢を取り囲んでガウァンラズが作った包囲の輪はこのようなありさまだった。
そしてダラ・ジャルグの息子フェルウェンがメイヴに向かって槍を投げた。メイヴは首を曲げて武器を避け、それはアリルとメイヴの娘の血で赤に染まったカーニアに当たり、彼女の胸の中の心臓を貫いたので彼女は死んでしまった。この少女は彼女の戦車から運び出され、そしてメイヴは彼女の墓を掘り始めて詩を作った。

    おまえたち、カーニアの墓を掘りなさい
    殺されて丘の上のここに横たわっている。
    ダラ・ジャルグの息子フェルウェンが
    彼女に死をもたらしたその槍を投げたのです。

    赤のカーニア、アリルと
    メイヴの娘、彼女は犠牲となった、
    影の丘で。
    エウィンの戦士たちの愛しい人。

    クー・ロイの息子ルガズの許嫁、
    七日の間、荒れ狂うことに喜んだ。
    彼女の墓石の上に彼女の柱を建てなさい
    おまえたち、彼女の墓を掘りなさい。

    (彼女の墓が)掘られますよう

そこで河のそばにその娘の墓が作られ、そのためカーニアはその川の名前となり、グレン・カーニアがその谷の名前となった。そして軍勢は大いに彼女を悼んで泣き声をあげて、クー・ロイの息子ルガズは彼女を嘆いて殆ど死んだようになった。

その後、すぐさまエリン軍はグレン・カーニアを西へと横切って移動し、多くのエリンの貴族が死に追いやられた破滅の谷の上を通り、ハゲのビラフの息子カルラダが落命したグレン・カルラダを横切った。そしてその間にもガウァンラズは虐殺と破壊をやめず、そのため彼らの貴族の多くが死んだ。そして彼らの中にはグリスとR――とルキナ、アリルとメイヴの三人の風刺詩人と彼らを護衛する三匹の獰猛な猟犬もまた含まれていた。
彼らはその後西へと移動し、ムニキンをさらに西へと通貨してロッホ・レトリアフのそばの丘の上にあるモルガンの砦、あるいは美しい髪のフリダスの砦と呼ばれる砦を目指した。
エリンの軍勢はモルガンの砦の周りの南北に要塞と陣営を築いた。

メイヴについて話そう。大軍勢の貴族たち、すなわちクー・ロイの息子ルガズとメスゲズラの息子アンガスとノシュの息子ルガズとモダ・フェビスの息子ローホ・モールたちが彼女の天幕へと案内された。これらの貴族たちが協議したのだが、アリル・フィンの砦を見て彼らは危惧の念を抱いたからだった。彼らはガウァンラズの貴族たちが砦にいる者どもと団結していようものならエリン軍は彼らに対して無力だと語った。
「おまえたち、わたくしに考えがあります」とメイヴは言った。
」伝言と使者をわたくしから彼らに送らせましょう。そして彼ら、すなわちダワンの息子フェルディアとマガハの息子ケットとフィダハの息子フロイフとエフタハの息子アンガスに寛大な協定を申し出ましょう。協定とはガウァンラズの王権が他者には秘密なままそれぞれに授けられることとクルアハンにおける恒久的な居場所とそれに加えて私のふとももの愛というこれらのことです。」
エリンの貴族たちはこの提案に皆で喜んだ。
「誰がその伝言を携えて行きましょうか?」と彼らは皆で言った。
」他でもない灰のカーラ、女性の使者でどうでしょう?」とメイヴは言った。

灰のカーラはフィダハの息子フロイフの居城まで旅をして、彼女の訪問の目的を彼に伝えた。フロイフはすぐさまこの約束を受け入れた。彼女はそれからフェルディアの砦に行った。そして彼女は同じ条件を彼に伝えた。フェルディアはそれらを完全に承諾した。とうとう、ガウァンラズの九人の首領は残らず彼女と会談した。そしてどの英雄に対してもガウァンラズの王権を別々に約束したのだった。そして彼らはみんな、めいめいにメイヴへ忠誠を約束した。彼らはこのようにアリル・フィンを見限ったのだった。
そして彼らのうちの誰も自分以外の他の者がこれらの協定を結んでいることを知らなかった。それから女性の使者はメイヴとエリンの貴族たちがいる場所へと戻った。

アリル・フィンについて話そう。彼はエリンの軍勢が城を取り囲んでいるのを見ると、家臣や相談役を呼び出した。彼らは審議を終えてガウァンラズの者どもへと使者を送って一日で軍勢を招集させようと彼らに求めることに決めた。二人の使者、エンガンは彼の城から、エダルは彼の谷から呼び出された。
そしてアサロイと呼ばれる二匹の鮭の河口の林へ、黒い脚のクルナンの二人の息子アンガスとエイに、エネの平原の若者たちに、そして同じ平原の兵士たちに、ブレフネの七人のブレスレンと同じ名前の三百人の勇士に海から丘へ、黒い脚のクルナンに、D――・スリゲフに、ディベルグのダアタと彼の息子たち、つまり二人の赤に、エタルヴァの息子イアハに、キンクンガの立派な城に、ゴル・オレフの愛娘アインキンに、オレフの平原のB――に、湖から海へ森から城へとアリル・フィンの王家の友人たちに、アリル・フィンの七人の息子と彼らに付き従う七百人の勇士たちに、山の終わりの砦にいるシドガルのガウァンと百人の血気盛んなガウァンたちに、茨の城にいるガウァンの息子デュバンに、二頭の鹿の砦にいるリーアの赤いガウァンとエリスの七人のフォスガウァンたちに、一人の砦にいるイウレンの七人のエオハズに、二つの滝の河口の砦のアリル・フィンの七人のダアタたちに、彼の砦にいるヌアハの息子エタルヴァに、彼の谷にいるエタルヴァの息子イラル・ヌアハへと使者たちは伝令を携えて送り出された。その後に彼(エダル)は出発した。
そしてエンガン、もう一人の使者は、南にいるガウァンラズつまり丸い丘の砦にいるエフタハの息子エイの領地の方角へと南西へ行った。そして曲がりくねった谷の砦にいる屈強な戦士ドゥブタハの息子ケアブリへと。平原の丘と呼ばれる大いなる丘の砦のアリル・フィンの息子、吃音のムレダハへと。レトリアフの砦の赤髪のフィダハへと。モイの谷のモンハへと。アランにいるエフタハの息子アンガスへと。ボレン西部の偉大なガウァンの息子ロスへと。ボレン東部にいるロイの息子、たくましいウアダへと。ロドの丘にいるロスの息子ロドへと。河口にいる戦士モンガハへと。グロアーの谷のアリル・フィンの息子アンガスへと。愛すべき滝の谷にいる上品なイヴァーの七人の息子へと。殺戮の場のロスにいるドゥブ・ダ・トン(二つの波の「黒」)の息子ファルベ・ロスへと。エリスの港のフィダハの息子フロイフへと。コベズの谷のヌアハの息子エタルヴァとエタルヴァの二人の娘へと。ボレンにいるベクへと。フィン・レティア(白い手紙)にいるエフタハの息子イランへと。レティア・ゲナンにいるフェイヴァルの息子ゲナンへと。クローアハ・パトリーグと呼ばれるオスラの砦にいるルアズ・リーへと。東の砦にいるキンテールの息子コブサハへと。コン・キミズへと。モダ・ミグネルへと。レティル・カイにいるフィダハの息子、穏やかな裁定者(ブレホン)カイへと。一つの木の平野の砦にいるフィダハの息子の血気盛んなエオへと。二つの波の河口の砦にいるフィダハの娘ウアウナへと。イヴァーの七人の息子へと、そしてアキルへと。ゴル・アクラへと。西方の美しい島の出身の七人のドゥブたちへと。当方の美しい島の出身の七人のテウェンたちへと。なだらかな平野の島の出身の七人の高貴な血の猟犬たちへと。影の島の出身の七人の番犬たちへと。フィナンの島の出身の七人のフィンたちへと。トレアハンの砦の赤耳のエトネへと。レティル・ム・ベラハ(裂け目の手紙)にいるトゥアズへと。フィアフラの砦にいるフェイヴァルの息子フィアフラ・フィンへと。ドゥンモアにいるエリスの三人のフォスガウァンたちへと。赤の砦にいるドラーの息子フェルジャルグ(赤い人)へと。一人の砦にいる黒のドゥブサハへと。小国の砦にいるガウァンラズの王ドナルド・ドゥアルブゼへと。頭(端)の砦にいるダワンの息子フェルディア、そして彼の二人の息子グアスとゴサへと。クルンの丘の砦にいるフィダハの息子、背の高いフランへと。上流が黒い湖にいる戦士ムインキンへと。ダーリの砦にいる赤のダーリへと。灰色のグルバンへと。墓のフィンハンへと。ディベルグの息子ダアタへと。
これらがフリダスの牛の強奪において列挙されるガウァンラズの貴族たちだ。そして彼らの貴族と大貴族、領主や英雄、支配者や相談者以外にかの召集に含まれなかったものはいなかった。

    さあ、エンガンよ、ゆけ!
    我が者どもを呼び出すのだ。
    我らのため、可能な限り急げ、
    彼らの召集を。

    ここに軍勢がいる、想像するに
    エリンの四大地方、
    アイの平原から来たアリルとメイヴに指揮されており、
    傍らには獰猛なアンガスとルガズがいる。

    傍らには戦に名高い七人のマネたち、
    傍らにはマガハの七人の息子たち。
    三千の勇敢なガレーイン族、
    ドウナン族の七人の王に率いられて。
  
    メイヴのフランク傭兵(ガリア傭兵)がおり、
    彼らの強さと働きぶりは無類、
    七度も語った三千の
    ウラズ人がここに一つの陣営にいる。

    我らはここで彼らを待つ、そなたが見ての通り、
    ガウァンラズに伝えることができる、
    もし我らが彼らを長く待たなければならないならば、
    我らはゆゆしき事態になるだろうと。

    ゆけ、美しい円丘の砦へ、
    そなたのそばにエフタハの息子エイを呼び出せ、
    ゆけ、ぬかりなく、曲がりくねった谷の砦へ、
    屈強な戦士ケアブリを連れて来るのだ。

    ゆけ、大きな丘の砦へ、
    軍勢の長、ムレダハへ。
    ゆけ、声望あるレトリアフの砦へ、
    赤髪のフィダハのために。

    波に突き当たる前に、
    モイの谷にいるモダの息子モンハを尋ねよ。
    ゆけ、アランに向かって西へと、
    そしてエフタハの息子エイをこちらに連れて来るのだ。

    海のそばのボレン西部に至れ、
    そこには偉大なガウァンの息子ロスが住んでいる。
    ゆけ、ボレン東部へ、そしてそなたに幸あれ、
    素晴らしく精強なウアダのために。

    ロスの息子ロドを彼の丘に探し求めよ、
    その丘から遠からず見つかるだろう。
    それからソナハを訪ねよ、
    そして戦士モンガハをこちらに連れて来るのだ。

    アリル・フィンの息子アンガスを、
    美しいグレアーの砦から連れ出すのだ。
    ゆけ、愛すべき滝の峰へ、
    美しいイヴァーの七人の息子へ。

    ゆけ、キンクンガの美しい砦へ、
    ヌアハの娘エタルヴァへ。
    立派な戦士エヴァと会見し、
    乞うてボレンからそなたと共に連れて参れ。

    レティルに至れ、喜ばしくて力強い、
    フェイヴァルの息子ゲナンがそこに住まう。
    リーの赤のガウァン、いつであれ、
    王の丘の上の二頭の鹿の砦にいる。

    親愛なるキンテールのコブサハへ、
    光輝なる東の砦にいる。
    コン・キミズと彼の百人の勇士たちへ、
    モダ・ミグネルへ急げ。

    平原の一本の木の砦へ、非難されることのない名誉、
    フィダハの息子、血気盛んなエオへ。
    二つの波の河口の砦へも、
    イヴァーの娘ウアウナへ。
  
    イヴァーの堂々たる七人の息子へ
    アキルから、洞窟から。
    ゴル・アクラへ、荒れ狂う力、
    彼の四百人の勇士とともに。

    ゆけ、美しい島の西へ、
    ダエル出身の三人のドゥブたちをそなたと一緒に連れて来るのだ。
    輝かしい美しい島の東から
    誠意を込めて七人のテウェンたち
  
    興奮した七人の高貴な血の猟犬たちを
    なだらかな平原の島から連れて来るのだ。
    七人の影の島の番犬、
    フィナンの島から七人のフィンたち。

    トレアハンの砦へ行きトレアハンへ、
    強大な赤耳のエトネへ。
    そなたはトゥアズへ、ケルンへ――来るべきだ
    トゥアズの二人の女性をそなたと共に連れて。

    彼の砦に至れ、彼の威厳、
    フィアフラ・フィン、鋭い刃の。
    ゆけ、ドゥンモアへとたゆまず、
    三人のエリスのフォスガウァンへと。

    ゆけ、彼の砦にいるフェルジャルグへ、
    遠大な計画のドラーの息子へと。
    一人の砦へも、
    黒のドゥブサハの座所だ。

    丁重に小国の砦から
    ドナルド・ドゥアルブゼを招け。
    偉業の王に伝えよ、
    わたしが重大な危機に瀕していると。

    ゆけ、端の砦に迅速に
    そしてダワンの息子フェルディアを連れて来るのだ。
    同様に彼の二人の息子、
    血気盛んなグアスとゴサも。

    クルンの丘の美しい砦へ、
    フィダハの息子、背の高いフランへと。
    粗野な戦士ムンキンへ、
    彼の住まう水場の上の砦へ。

    剛勇のデュバンにたどり着け、
    茨の砦にいるガウァンの息子。
    かの英雄をここに私のもとへ連れて来させよ、
    彼の全軍をもって。

    彼の砦にいる赤のダーリを見つけよ、
    灰のグルバン、目標に果敢なる。
    墓のフィンハンの他に、
    ディベルグの息子ダアタも。

    彼らそれぞれと一緒に三百人の勇士を。
    彼らの召集はこのようにする。
    この真実の言葉をこれらの者たちに届けよ、

    さあ!

エンガンについて話そう。彼はガウァンラズに向けて彼らのいくつかの居住地へと出発し、北部のドロウ川から南部のボレン西部へ、クーフーリンの跳躍(という名所)からルムネフと呼ばれる二つの大森林の木へ、そしてとても荒涼としたエスラーグの丘と呼ばれるルブネフの息子灰色の脚の丘へ、人里離れたダヴニシュの見目麗しい鬱蒼とした木々の安息地へ。そしてエフラパーのいかなる時も守られた輝かしく見晴らしの良い峰から、北部の広範に広がる平原にある幾重にも青波が洗うトー島の白浜へ。それというのもこれがガウァンラズの領地であり、穏やかでいられる土地だったからだ。彼の歩みはこのようなものだった。
エリンの者どもについて話そう。彼らはフリダスの砦に到着するとそこで停止して陣営を築いた。それから、メイヴの部下の四人の選抜された実績ある豪傑がガウァンラズから名声と名誉を勝ち取ろうと前に陣取った。彼らの名前はカーラ・コンガの息子カーラ、戦士モンガハ、赤い手のレアトリフ、屈強な勇士クレンだった。そしてこれらが対抗して選抜された戦士だった。つまり、カーラ・コンガの息子カーラに対しては円丘のエフタハの息子エイ、戦士モンガハに対してはレトリアフの砦のアリル・フィンの息子の吃音者ムレダハ、勝利のレトリアフに対してはレティルの砦のフィダハの息子フラン、赤い手のクレンに対しては水辺の上の砦のムンキンだった。

さて最初にカーラ・コンガの息子カーラのなりゆきをここに語ろう。彼はエフタハの息子エイの城へ行き、エフタハの息子エイは彼を迎えた。そして彼はその豪傑に対して口上を述べ、詩を作った。

    我が城壁にやって来た貴様は、
    我が砦になにゆえ来たのか述べい、
    貴様の名はなにか、その気が許せば、
    なに者であるのか宣言するがよい。

    わしの家族の名に、わしは誇りを懸けている、
    カーラ・コンガの息子カーラだ。
    わしが家を離れて来たのは、
    エフタハの息子エイを探すためじゃ。

    わしはメイヴのもとから出発した、彼女の名声はすごいものじゃ、
    フリダスの砦にて、彼女の軍勢は膨大な数よ、
    そこでアリルに戦いを挑んでおる、
    そしてイルス・ドウナンの戦士たちにもじゃ。

    哀れなことよ、大規模な陣容から来て
    そして大軍から離れてしまうとは。
    貴様をここに連れてきた試練を、
    貴様は後悔するしかないのだ、戦士よ。
  
    貴様。

この詩を作った後、戦士たちは戦った。彼らは勇敢で英雄的で厳格で憤り怒れる戦いをした。彼らは戦いの中で盾を破り、剣を曲げた。そしてとうとう手練れのエフタハの息子エイがカーラ・コンガの息子カーラに打ち勝ち、決闘で彼の首を斬った。

モンガハはアリル・フィンの息子の吃音者ムレダハに挑戦しに行った。ムレダハは屈強な戦士との戦いを断る理由はないといい、それから彼らはこの詩を作った。

    きさま、巨漢の中の巨漢よ、
    わたしはきさまの挑戦を断らぬぞ。
    なぜわたしが貴様を避けねばならぬ、物事はあるがままに、
    取り決めの確約がきさまとの間になけれなならぬのか?

    わたしの伝言を城に伝えよ、
    きさまは保証を得るだろう、
    吃音者ムレダハから求める
    禿げ頭のモンガハとの決闘を。
  
    わたしは偉大なるムレダハ、
    この城塞と軍勢はわたしのものだ。
    わたしはきさまに保証しよう、後に我らは乞われるべきではないと。
    わたしたちを分け隔てようと申し出る者はいないだろう。

    モンガハ、きさまのうぬぼれは大したものだ、
    わたしと戦おうと探し求めるとは、
    きさまの吹聴はうぬぼれ男のそれだったと、
    わたしがきさまに真実を教えてやろう。

    男よ。

それから彼らは怒り勇敢で互角の決闘、鋼の刃を持って恐ろしく決着のつかない戦い、獰猛で向こう見ずな聞いたこともない抗争を戦い、とうとう決闘者たちは一つの血糊をつくり肉を切り刻まれた。そして終いにモンガハは獰猛な攻撃で死に、ムレダハは彼の体から首を切り離した。

メイヴの軍隊の勇敢な戦士、レトリアフはマイル・フリダスの群れの戦士ムンキンに会いに行った。レトリアフはマイル・フリダスと彼女の牧人を奪い去りたいと大いに望んでいた。それというのも彼は部下にそうできたらと吹聴していたのである。彼はその牛を怒った雰囲気で眺めた。
ムンキンはその戦士を迎え、彼に話しかけ、その時にこの詩を作った。

    勇士の功業に餓えているお前、
    たくさんの戦士にお前は打ち勝った。
    (それでも)お前は戦うことなしには奪い去れぬ、
    森にいるおれの家畜の群れを。

    牛たちの面倒を看る下男よ、
    そなたを助けようというものは僅かしかおらぬようだ。
    実際、そなたといるのが誰であれ、
    あるいは一人きりでもそなたは自らの任務にあたるのか?

    おれはここにいるぞ、見ての通りだ。
    マイルの世話をしている。
    どんな戦士であれ、混じりけのない喜びで、
    戦わずに彼女を連れ去れないのだ。

    「わたしはそなたの家畜の群れのことでそなたと戦いたくはない」
    偉大で勇敢な戦士は言った。
    」もしそなたがまっすぐに家に帰るのであれば」
    「そしてそなたの牛をここに置いていくのであれば」

レトリアフはムンキンにマイル・フリダスを明け渡せ、そして慈悲を与えようと話しかけた。しかしムンキンは世界中のどのような勇士に対してであっても、彼の家畜の群れと牛を力ずくで奪い去らせるには誇り高すぎた。その戦士たちはすぐさま盾を取り、長く鋭い切っ先の槍を真ん中に掴み、鋼鉄の堅く幅広の溝付きの剣の柄を握った。そして二人の闘士は勇ましく不屈の決闘で戦った。そして彼らの剣は木製の盾に対して曲がり、槍(の柄)は絶え間なのい突きにより削れ、彼らは剣の斬撃により首を垂れ、戦闘用メイスによって負傷し、重い鎖帷子を抜けて脇腹を切られ、とうとう終いには彼らの武器は役に立たなくなってしまった。それから彼らは拳を伸ばし互いの屈強な肩をめがけて振りぬいた。そして彼らは荒れ狂い、長続きする、強力な格闘の戦いをして、そのため彼らは互いのたくましい肉体をねじり、あばら骨と脇腹を痛めつけ、相手の頭を地に押しつけた。その戦いで勇士たちの顔から、勇敢な戦士たちの方から、偉大な兵たちの脇腹から滝のような汗が荒々しく流れ出した。そしてついにムンキンは打ちのめされ、屈服し、激しい戦いの中で重々しく身を投げ出した。その英雄は戦いの果てに拘束された。
レトリアフはそれから肩に彼を担いだ。彼を責め立て軽蔑するような言葉で話しかけた。彼はその戦士をメイヴの御前に引き出すだろうと言った。ムンキンは一季節の間は名誉もなくやっていこうと答えた。
」そなたの去就は問題にはならぬだろう」とレトリアフは言った。そして彼らはそれからこの詩を作った。

    速く来い、ムンキンよ、
    わたしの背におぶさって、
    もしもわたしがそなたを東方へ連れて行かば
    鴉がそなたの血を飲むだろう。

    おれをどの道に連れて行こうというのだ、
    レトリアフよ、そんなに急いで。
    おれは自分の脚のほうが良いのだ、
    運ばれることが快適であってもな。

    そなたはメイヴに
    そしてアリル王にまみえるのだ。
    この日まで、わたしの功績となる間に、
    わたしはそなたの行く道にいる。

    わたしはそなたを運ぶぞ、
    九つの尖った串まで。
    そなたの寝所は赤く熱くなるだろう、
    そなたはそこに投げ入れられるのだ。

    それがそなたの運命になるだろう、
    そなたの努力は全くの無駄骨というわけだ。
    今夜そなたの精髄は震えあがる。
    猛禽はそなたの内臓をついばむであろう。

    来い、ムンキン。

この詩のあとにレトリアフは戦士ムンキンを背負って戦いの場から全速力で移動した。
ムンキンは彼の友人たちが彼を助けることができるほど近くにいないし、手の届くところに十分な数の支援者もいないと完全に気づいていた。レトリアフがなんとか早く彼を運び、暴力的で確実な死が彼を待っていることを深く納得するほかにはないとを彼は感じていた。戦士ムンキンが突然勢いよく跳ね上がり彼を縛っていた紐と枷から四肢を解き放った時、レトリアフはそう遠くまで進んでおらず、そのためその勇士は彼の手を放り出し、彼の脚の力を振り絞ることができた。彼の足が地面にしっかりを踏みしめると、彼は鍛え上げられた力強い腕を王の戦士の腕に巻き付けたので、その勇士は回ることも戦うことも格闘することも奮闘することもできなかった。
彼はそれから膝を足に打ち付けてもう一人の脚をかっさらい、そして高貴な戦士を前後逆転して押したので、彼は倒れ込んでうつ伏せになった。彼はしっかりとその闘士に枷をはめて縛りつけて、古巣に乗せて帰ると言った。レトリアフは彼を運ぶ方向を尋ねた。
「おれはアリルとメイヴのところへは行かぬぞ」とムンキンは言った。」だが暗い湖の隅に戻って、すぐにでもお前を沈めて、確実に湖の名をお前にちなんで命名する。そうすればおまえは決して再び牛を奪いに来ないだろう。」
そして彼らはその詩を口にした。

    来い、レトリアフ、おれの背中におぶさって
    お前が今度は運ばれるようになるだろうさ。
    お前はあのような扱いを受けることになるだろう、
    おれにやったように。

    そなたはどの道をゆくのか、
    ムンキンよ、簡潔に答えろ。
    お前を見て喜ぶ
    お前の勇士達の面前ではないさ。
  
    しかしお前の問いに応えよう、
    おれたちは静かに進んでいくのさ
    この湖のふちへと。
    そしてお前のあっという間の破滅へとな。

    本当のところを言うとお前は沈められるのさ、
    この冬の湖の波間の下に。
    おおよそ確実なことだがお前にちなんで
    暗い水辺は名づけられるだろうよ。

    お前の略奪の功績は、
    レトリアフ、終わるだろう。
    牛の試練は、愚かな挑戦だったな、
    みじめな男め、速く波間を通り過ぎろ。

    来い。

この詩のあとにムンキンはレトリアフを肩に担ぎ、全速力で湖のふちへ行った。そして瞬く間に彼はレトリアフを両手で掴み、その王の戦士を湖に投げ入れたので、その屈強な戦士は暗い湖の恐ろしい水底へと沈んでいった。そこは彼にちなんで名づけられた。ムンキンはその後に彼が正しく注意深く世話をしていた家畜の群れと牛に戻る道を進んだ。

それからメイヴとアリルの部下の勇士クレンもまた、フィダハの息子の背の高いフランに戦いを挑むべく進んでいった。彼はフランの城の前まで来ると、そこの人々は彼の衣装と容姿と並外れた不作法にあわてふためいた。門番は彼にどこから来たのかということと来訪の目的を尋ねた。
彼はフィダハの息子の背の高いフランに決闘を挑むべくやってきたと言った。
「そしてゆくのだ、門番よ」と彼は言った。」そしてフランに、彼に決闘に招待しようという名高い男がそこにいると伝えよ」
「名をうかがいましょう」と門番は尋ねた。
」クレンがわしの名よ」と彼は応えた。「そして背の高いフランを屠るよう宿命づけられた男だ。わしがやつに戦闘を挑みに来たのはこれが理由よ」
そして彼らは詩を口にした。

    フランの城の門番よ、
    戦いを求めて参った者がここに一人おるぞ。
    メイヴの軍の屈強な戦士。
    向こうにいるお前の主君にそう言うのだ。

    傲慢な物言いの戦士、
    あなたの名をうかがいましょう、
    それも含めて伝えましょう、あちらにおわす
    フィダハの息子の背の高いフランへと。

    わしはクレン、大きくて強い。
    背の高いフランを屠る者だ。
    わしは一日の戦いで百人を殺す。
    嘘は言わぬぞ、門番よ。

    門番よ。

背の高いフランはそれからクレンを迎えるべく進み出て彼に言った。
」クレン、もし貴様が拙者と戦うにふさわしい武勇を備えておるのならば、わたしとの戦いを待っているがいい」
「わしはもちろんそのつもりだ」とクレンは答えた。
二人は獰猛に厳格に戦った。彼らのどちらもが相手を盾で殴打し、これらの一流の戦士たちの重い一撃によって壊れてしまうほどの盾がこすれる音は天空の雲にまで響いた。フィダハの息子の背の高いフランは物騒でよく動く右手を振り上げ、彼が手に持っていた鋼鉄のメイスで勇士クレンの粗野な頭を殴打しようと狙いを定めた。クレンは横に頭を曲げてひねり、盾を肩の上に高く掲げた。大きくて幅広のメイスはクレンの盾の真正面と頭蓋骨の頂点に振り下ろされた。その一撃は盾を装飾品もろとも打ち割り、クレンの頭は、リンボクの実ほどの大きさの脳漿の欠片も見当たらないほど小さく破片になって砕けた。クレンはその悲惨な一撃で死んだ。それからフランは剣の一撃で彼の首を斬り落としたのだった。

まさにその時、エリンの貴族の中でも偉大で勇敢な戦士で、傷を与えるのに手練れで、強大な指揮官、コナル・ケルナハの息子の輝く胸のウアスネがガウァンラズから名誉と名声を得んと決意した。そして彼はフィダハの息子フロイフの城と良き土地に攻撃と略奪をしに行くことを目的にした。アリルとメイヴはこの決意を承知していた。彼はと数多く果敢なフィダハの一族が慣れ親しんでいるその領域と土地に進んでいった。彼は大いに戦果を得て、彼らに暴力的な多くの行為をすることに専心した。フィダハの一族の五十人の若者が彼によって死に、そして彼は冷酷に思慮なく彼らを攻撃した。彼が彼らに対して激しく殺戮と破壊をしている間に、屈強で厳格に復讐する勇士、フィダハの息子フロイフが彼のもとにやってきた。彼は彼らに一度、何者なのかを尋ねた。
」コナル・ケルナハの息子の輝く胸のウアスネだ」と彼はいった。
「わたしの友人の息子か」とフロイフは応えた。」わたしたち二人は一度は同盟と友情を交わした。わたしはコナルや彼の家族の何者にも決して攻撃しないと、言葉にしたのだ。そして彼も私に対して同様にした。そしてこのように起こってしまった事を見たからには、お前は私の家畜の群れと牛を邪魔せずに置いていけ。そして若者を殺すのをやめよ」
そして彼はこの詩を口にした。

    争いから手を引け、ウアスネよ、
    そして分別ある忠告に従え。
    偉大な力を持つ多くの英雄は
    過度に残酷な行いはしないものだ。

    友にして養子兄弟の息子よ、
    わたしは反駁されぬ真実を語った。
    わたしは人殺しの技をお前に見舞わない、
    ウラズの戦士たちに対する敬意から。

    勝利のコナルの息子よ、
    わたしの家畜の群れと財産を置いてゆけ。
    わたしたちの軍勢が今度はお前たちに襲い掛かろうとも、
    お前を見捨てない者がここにいるのだ。

しかしウアスネはフロイフの頼みや彼の一族のそれに耳を貸さなかった。彼は若者たちを殺し、彼らの多くの命を奪った。フロイフは再び彼に呼びかけて忠告した。
「わたしの民を殺すのをやめろ」と彼は言った。」さもなくば、貴様はわたしの憤りとこの怒りと、そして牛を奪われて若者たちを殺された勇ましい一族から責めを被ることになる。そしてお前が仕掛けているこの争いから手を引けば、わたしはお前のしでかしたことをわたしの名誉とフィダハの一族のそれを引き換えにしても許そう。」
ウアスネは応えてこのように喋った。「俺は自分の勝利と暴力を止めぬ。それに俺はアリルとメイヴとエリンの四大地方に約束し誓ったことを破れない。」
彼は若者にとびかかって彼らを殺した。偉大で勇敢な戦士フロイフはこれに怒り、そしてウアスネにその遭遇で死ぬことになる獰猛な一撃を見舞ったのだった。

メイヴとアリルとエリンの四大地方の成り行き。
彼らはアリル・フィンの城の前に七年(七日?あるいは二週間かも?)居た。そして六人の男の決闘を毎日その時を偵察していた。これらが決闘を戦った男たちの名だ。ケアブリとエイとアウァルガズ、アリル・フィンの三人の息子たち。そして彼らの対戦相手が赤の息子ビルジャルグの息子ガイアー、赤の息子イハーの息子のロヘド、そして隻腕のガバの息子アンガスの息子アズゲアルだった。その勇士たちは勇敢に技を繰り広げ巧みに、そしてとても活発に獰猛に真っすぐな剣の一閃の妙技を繰り広げ、互いに切り刻みあいかつてないほど獰猛で血まみれの深い傷だらけの戦いをした。そしてその一部始終の七日目に彼らを目の当たりにして、彼らは六人の男たちの決闘ほど見事な試合を見たことはなかったと皆で口々に言った。アリルとメイヴとエリンの貴族たちは彼らを称揚して、メイヴはこれらの言葉を語った。

    わたくしは良き試合運びの戦いを見ました、
    六人の勇士たちの戦い、
    砦からはアリルの三人の息子たち、
    そして三人の男らしい勇士たち。

    赤の息子のビルジャルグの息子のガイアー、
    そして多くの妙技を持つ、せむしのケアブリ、
    遠くより来たイハーの息子ロヘド、
    そして強力な攻撃エイ、

    隻腕の息子アンガスの息子、
    獰猛なちびでぶのアズゲアル、
    高貴な吃音者アウァルガズ、
    がっぷり四つに(戦うさまの)、彼らをわたくしは見ました。

    わたくしは見ました。

さて、諸侯の選び抜きのこれらの六人の誇り高く厳格で高貴な戦士たちは互いの対戦者に互角の断固とした激しい決闘を戦い、打ち合い、圧倒的で、脇腹を切り刻み、腫れあがり、傷つけ、憤り、とうとう六人の高貴な戦士たちは全て戦場で一緒に命を落とした。
それから三人の殺しに巧みなエオハズたち、デザの息子のティゲルナハ・ティズヴァナハの三人の息子がバグナの三人のアンガスたちに決闘を挑んだ。そして戦いの現場に彼らが到着すると、どの勇士も対戦相手に向き合った。屈強な男たちは互いに勝ち誇って言葉を交わし、メイヴはティゲルナハの三人の息子たちを煽りたてて、この詩を詠んだ。

    ティゲルナハの三人の息子たち、
    お前たち戦いの相手に強力に吸いつけ
    男らしい攻撃をせよ
    バグナの三人のアンガスに。

    相応しい戦いを遂げよ、
    ――アリルの息子たちに対して。
    なぜなら武勇の功業に良い相手は
    王と女王の息子たち。

    三人のエオハズ、三人のアンガス
    互いに斬り合え。
    素晴らしい戦いを彼らが立ち向かい
    並ぶ三組。

    三。

その決闘はそれから素早く獰猛に敏速に戦われた。誰もが対戦相手の白い盾の縁の下をかいくぐり鎖帷子の隙間を狙って回り、とうとう六人は一緒に死んだので彼らのうち誰も生還することはなかった。
それからブレフネの三人のブレスレンがエリンの者どもに決闘を挑み、そこで三人のグラス・アルゲドたちが反応した。これらの者はヌアザ・ネフトの三人の息子で、タジィウの部族の三本の武勇を示す松明だった。そしてアリルとメイヴに養育されていた秘蔵っこだった。(だが)戦士たちは良い戦いをしなかった。つまり、三人の若い未熟で優柔不断な若輩者に対するは三人の勇ましく勇敢な勇士だった。そしてこのようであった。三人の力強い男たちと三匹の闘犬、つまりブレフネの三人のブレスレンたちが不平等な戦いで上王の素晴らしく見目よい息子たち、つまり三人のグラス・アルゲドに勝ち、そして三人を殺した。メイヴとアリルはそこで大いに嘆いた。彼女はこの出来事だけで遠征を引き受けたことに悩んだ。そして彼女はこれらの詩を作った。

    わたくしは自らの相談事を悔いています、
    留まらなかったことは悲しみの原因ですから。
    嬉しくないことです、わたくしの三人の養い子が
    三人の勇士に相対してしまったことは。

    わたくしの諍いは愚かでした。
    彼らは、アリルよ、この災厄を招いたのです。
    ヌアザ・ネフトの三人の息子の戦死は
    この遠征の目的ではありませんでした。

    三人のグラス・アルゲドが死んでまでも、喜びを
    わたくしは求めていませんでした。
    わたくしは悲しみ嘆くことでしょう、
    三人のブレスレンと戦うことを彼らに許してしまったことを。

    わたくしは悔いています。

エリンの四大地方の成り行きは述べられていないが、包囲されている砦にいるアリル・フィンとロイの息子フェルグスについて話そう。アリルは言った。
「よくも愚かな試練のためにメイヴはこちらへ来たものだ」と彼は言った。「なぜならわたしが抱えている勇士は全てこの砦にいるから、エリンの者どもは決して奪い取ることはできぬ」
彼は黙って聞いていた。アリルと彼の家来は砦の城壁に行って、エリンの軍勢を眺め、そして城内にはフェルグスとフリダスと彼女の侍女以外には誰もいなくなった。そしてフェルグスがこのように言った。
「フリダスよ」と彼は言った。「わしとお前の相思相愛をエリンの者どもが聞いて、そしてわしがそなたをここに置き去りにしようものなら、そなたは決してこれまでと同じように擁かれることはなかろう。このような場合、わしらはどうするべきだろうか」
「わたしはわたくしたちが為さねばならぬことを確信しておりますわ」とフリダスは言った。
「それというのも、アリルのために盛大な宴をわたしが催します。そしてその大公(Ard flatha)が酩酊し理性を失うまで、そして彼の精神が大いに高揚するまで祝宴の最上の物を彼にせっせと勧めます。彼がそのような有様になったとあなたさまに見えましたら、エリンの者どもに砦へ攻撃を、しかし弱々しく仕掛けるように言ってください。そして彼は答えるでしょう。『もしもお前が奴らと一緒ならば、奴らはもっと勇敢に戦うだろうと思うか?』と。
それからあなたは自分の強大な腕前で彼らを助けることができたのなら、彼らは今より前にゆうゆうと(城を)奪っていたでしょうと、言ってください。彼がこのような言葉を聞けば、理性を失い気分が高揚しているためにあなたを自由にしてしまうでしょう。」

それからアリルは大宮殿に入り、フリダスはその豪勢な祝宴の火のように強い酒を彼に差し出した。祝宴会場はガウァンラズの勇士たちによって序列を整えられていた。アリルは彼らの間の宿場の王の寝椅子に座り、フリダスは彼女の従者と一緒に彼の対面に、一方でフェルグスはドゥブサハとアンガスを脇に従えて勇士の席に座った。そして序列と座席が済んだら、彼らはしきりに酒を飲み、とうとう貴族たちは酩酊して騒がしくなった。この時にフリダスとフェルグスの使者がそれを素早く見て取り、アリルに聞こえるようにその場の周りで三度の突然の驚異的な叫び声をあげて、果敢にも急いでたどり着いたのはまさにその時とその時節だった。
それからエリンの者どもは砦に攻撃をしかけるべく進み、彼らは砦の周りで三度の大声を上げた。それからフェルグスは気づいたように言った。「エリンの四大地方がこの城塞に弱々しく意気消沈したやり方で攻撃してきている。」
アリルは首を起こして彼を見た。フェルグスはもう一度述べた。「わし自らはこれらよりももっと勇敢に戦っただろうにと思う兵士たちを知っておる」
「どの軍隊だ、それは」とアリルは尋ねた。
「わしと同行して亡命してきた者たちだ」とフェルグスは言った。「ムイルン・モルファグの要塞とその他のウアルダの都市を包囲した時のな」
「こう言いたいようだな」とアリルは言った。「もし彼らの間に貴様がいれば、貴様はこの砦をすぐにでも占領していたと」
「わたしの良心にかけて」とフェルグスは応えた。「もしわしがエリンの者どもと一緒に外で自由の身だったのなら、わしはとうの昔にお前の砦を占領し、お前の勝利と首級はわしに奪われておった」
「言ってやるぞ、」とアリルは言った。「私は貴様をただちに自由の身にしてエリンの者どもに加勢させ、そのようになるか確かめてやろうとな」
それからアリル・フィンは立ち上がってフェルグスとドゥブサハと隻腕のガバの息子アンガスから彼らの枷と鎖を取り払った。そして彼らはすぐに城から出てエリンの者どもに加勢した。

エリンの者どもは砦から出て近づいてくるフェルグスを見ると、彼らは同時に一人の男が素早くするどく獰猛に慌ただしく、盾をたわませ、赤く滑らかな鋭い穂先の槍を真ん中に掴み、柄で剣の一撃を見舞えるように皆で立ち上がった。そして彼らは彼らの戦いの武具を、つまり彼らに似つかわしい三つ編みの鎖の上着に、宝石がちりばめられた格好の良い兜を身に着け、そして彼らはとても大規模で勇敢な三つの戦闘部隊になって整列した。彼らは皆で立ち上がり、戦いの武具を身に着け、そしてその軍勢はこぞってアリル・フィンの要塞を打ち壊し、彼を殺してフリダスを連れ去ろうと決心した。
それからフェルグスはエリンの者どもに加わり、そして彼らは皆で彼を歓迎して、彼がやってきた場所の状況について彼が見定めたことを尋ねた。
「わしはあそこから出てきた、」と彼は言った。「最上の不屈の精神と勇気と気高さを持つ男、そして最も思い上がり軍勢と群衆を保持する男。わしがかつて出会った中でもな。彼は、エリンの者ども、そなたらとわしに敢えて力づくで彼の城を奪わせようとしたのだ。
彼の指揮下の部下は特にフェルグスを歓迎した。ブリクリウは彼にとても馴れ馴れしく話しかけ、その古強者をしつこくとがめた。彼は前はあのように勇敢な英雄戦士として決して振る舞わなかったと言った。フェルグスは実際に彼の剣がなかったこと、それに大勢で彼を攻撃したから、彼らは彼を捕虜にできたのだと答えた。そして彼らはこの詩を詠んだ。

    あなたは滅多に見られてこなかった、フェルグス、
    矜持も功績も持たないと。
    残念なことに死はあなたを襲わなかった、
    (このような窮地で)誰かがあなたを見えてしまう前に。
    あなたの冒険の結果として、
    あなたの武勇は消え失せてしまった。
    わたしはあなたを見て後悔しています、
    あなたの身なりが様変わりしてしまって。

    酷い状況だった、ケアブリの息子よ、
    強大な武器、
    そしてそれらを振るう者どもの数、
    恐ろしい運命だった。
    盾が割れて壊れて、
    それは少なくない遭遇戦だった。
    わしの浅瀬での戦いは
    ほとんど地を破裂させた。

    わしは剣を持っていなかった、
    わしの槍が折れてから。
    その争いが厳しかったことを
    わしは隠し立てしないし、お前もだ。
    わしの手には武器がなかった、
    戦いが荒れ狂った時に。
    連打は苛烈だった。
    たくさんの犠牲がそこにあった。

    お前はどこにいたというのだ、ドゥブサハ?
    そしてお前、獰猛で気性の激しいアンガスは?
    二人は戦いに行っただろう、
    熱望し、喜んで、
    血まみれの刃がそこにあっただろう、
    お前たち二人だけが戦いの流れを変えたのだろう、
    この日までお前たちがその矛先を支えたのだろう、
    もしお前たちだけがそこにいたのなら。

    滅多にない。

さてエリンの者どもは彼らに近づいてくるフェルグスを見て、彼らは要塞を諦めて、ガウァンラズの攻撃に直面しないようにしようと思った。フェルグスは彼の勇ましい武器にかけてエリンの者ども皆がその砦から手を引いたとしても、彼は強制されるまでそうしないだろうという誓約した。そして彼はメイヴとエリンの貴族たちにアリル・フィンの城を蹂躙し破壊するためにとどまって欲しいと嘆願した。それというのも彼はアリル・フィンに負わされた不名誉を恥ずかしく思っていたからだった。メイヴのエリンの者どもに対する権威は彼らにフェルグスと共に残るよう無理強いさせるほどのものだった。彼らは翌朝に砦へ皆で攻撃をしかけようと思った。エリンの四大地方とドゥブロンガスたちはそれから共に進んで攻撃した。そしてアリルとメイヴとフェルグスは彼らを強く促し、彼らはただちに要塞を攻撃した。そして戦いを挑み、彼らはスズイクとスドルガナ(おそらく喇叭のような楽器)を響かせて大きく恐ろしい叫びをあげた。アリル・フィンはこれらの叫びを聞くと素早く起き上がり、親衛隊に拍車をかけて軍隊を整列させ、門を開くように命令した。エリンの者どもはアリルが砦の門を開いたのを見た時驚いた。そしてアリル自身についてだが、彼はその兵や英雄や勇士や闘士や戦士や貴族たちの戦闘部隊や隊列を見て驚き困惑したが、彼らが多大であるとはいえども、正念場に堪える覚悟があった。しかし叫びは高く、怒り荒れ狂い、攻撃するに強大で、滅多にお目にかかれないような雷鳴の技、そしてガウァンラズの兵たちとアリル・フィンの親衛隊たちがエリンの者どもに敢行した英雄的な突撃、そのため大勢が双方で死んだ。

アリル・フィン自身について話そう。彼が顔を向けた場所はどこれあれ誰も彼との戦いや突撃に耐えれる者はおらず、数えきれないほどの男たちが彼の手にかかって死んだ。エリンの四大地方はその日潰走した。彼らの戦列は午後までには完全に打ち破られた。(アリルは)エリンの者どもに勝ち誇る勝利の手柄とともに砦に帰還した。その場はそれから締め切られた。彼らは祝宴場に座り、日光が完全に彼らの上に輝くまで飲み楽しみ続けた。そして六日間はこのようなやり方だった。アリルはこの間に彼の陣営に勝利をもたらさなかったことはなかった。そして七日目でさえ彼はエリンの者どもを打ち負かし、その日にエリンの四大地方のいずれからもそれぞれ七百人が命を落とした。たったの百二十人を除き、彼に敵対したその七百人はすべて死んだ。そして彼はその場所に午後に帰還した。彼らは城門まで追われた。それからその場は締め切られたのだった。彼はそれから戦いの甲冑を脱ぎ、ただちに彼の部下を会議に呼び出した。そして彼はこのように言った。
「ガウァンラズは皆で我らを見放した」と彼は言った。「メイヴの嘘いつわりとフェルグスの悪だくみとアリルの仲介とマネたちのとても気前の良い賄賂のために。そしてわたしがフリダスの牛取りの遠征で今この時に死ぬとことは確かだろう。なぜなら私のドルイドたちが私に、私の妻が理由でメイヴとアリルとフェルグスの手にかかり私が死すべきことを予言していた。私の信頼する従者、ドゥブ・ドガーはどこか?」彼は続けて言った。「ガウァンラズに急行し、彼らを叱責するのだ。ダワンの息子フェルディアに彼が主君を見捨てるような間違った約束のためだけに忠誠を誓ってしまっていると。フィダハの息子フロイフも同じように告げろ。そしてドナルド・ドゥアルブゼには、ガウァンラズ全体が彼に加勢しないだろうからといってメイヴの大群やフェルグスの武威やアリルの無慈悲な敵意と敵対する危険を冒せないのだと告げろ。」
そして彼は従者をこの任務に送り出して、次の詩句を続けた。

    進め、ドゥブ・ドガーよ、
    この戦闘が戦われる前に、
    そして私の指令を運べ
    西方世界の戦士たちへ。

    砦々の英雄たちに迫れ、
    気前の良い者よ、私たちに加勢するように、
    男らしい貴族たちが私のもとから去らない限り
    エウィンの戦士たちだけに立ち向かう。

    フィダハの息子フロイフに告げろ、
    祝宴の広間の英雄だと、
    彼の主君の墓石が立てられていると
    エウィンの戦士たちによって。

    ドナルドに遅れることなく告げろ、
    たくさんの功業の戦士よ、
    輝かしい王に
    メイヴの略奪者の大軍勢を求めさせるな。

    私の親愛なる有能な息子、アンガスは
    輝かしいグレアーの砦から来るべきだ。
    その高貴で元気ある戦士は進むだろうし、
    そしてドゥブサハ・ドゥブガは来るだろう。

    そしてまた来るだろう、もし彼が(我らの窮地を)知っていれば、
    輝かしく険阻なロスの砦からケアブリが。
    彼からアリルへ遠く離れていない、
    灰の頂上のボレンからエオハズが。

    この時へそこで損なうことはなかった
    彼らの名声も名誉も、
    私はゴル・アクラとアレフを
    私の王の支持者だと信じている。

    その貴族たちは私のからだを運ぶだろう、
    すぐにでもラレフの頂きへ。
    屈強な戦士たちの一団が、
    私の勝利を見届けに来るだろう。

    彼らは地に安置するだろう
    私の剣と槍を。
    彼らは私の墓の上に石を据えるだろう。
    彼らは私を悼むための競技会を執り行うだろう。

    私の芝で覆われた墓が掘られるだろう、
    戦士たちによって、彼らの憤怒凄まじく、
    彼らは左手周りに回すだろう、
    私の顔を血の赤のクルアハンへ。

ドゥブ・ドガーは使命のために出発し、ガウァンラズの団結を確実なものとするべき翌朝の夜明けまでにアリルのもとへ戻ると約束した。彼は旅を進めて、アリルに加勢させるために彼が来たガウァンラズの全ての者どもにきつく押し迫った。この従者のなりゆきはこのようなものだった。
アリル・フィンの動向が今語られる。その従者が出発したあとに、彼は大勢の部下を呼び出して彼らに下知した。
「翌朝に激しく戦え、愛する者たちよ。」とアリルは言った。「なぜならメイヴは確実に彼女の盾をお前たちの城門に立てるだろうし、フェルグスも同じようにするだろう。そしてアリルとコルマク・コンロンガスとマネたちとマガハの息子たちとクーロイの息子ルガズとノシュの息子ルガズとフェヴィスの息子ローホとメスゲズラの息子アンガスとフィンゲンの息子エオガン・フィンも。そして彼らはお前たちの場を打ち壊すだろうし、城門を破壊し、お前たちを殺す。そしてお前たちの牛と財産を奪い去る。」
「全く深刻な状況です、王よ」と彼らは言った。「我らは戦うには余りに数が少なく、三人一組を合計して百人に満たない。」
「召集しうる全員を考慮しても」と彼は返答した。「お前たちは皆で死ぬしかないだろう。しかし勇気と手柄を見せつける者たちは死ぬことはない。ならば勇ましくお前たち自身とお前たちの主君のために戦うのだ。」
「あなたの妻の忌々しい企みと裏切りによって我らの奮闘はくじけませんでした。」「我らはフェルグスと我らに敵対するエリンの四大地方を(砦の)外へ(生かして)出しませぬ。けれどもあなたの妻とメイヴの裏切りは我らを出し抜いた。そしてそのうえにガウァンラズたちはあなた様と我らの両方を見捨てたのです。しかしあなたを守るようにどのように頼む必要もありませぬ、我らのうち一人でも生き残っている間は、エリンの者どもの誰からもあなたに傷も槍の貫通も負わせることはないでしょう。」
「そなたらに祝福あれ。」と彼は言った。「そして私を見捨てたものたちに呪いあれ。もしも私がフロイフとフェルディアとドゥブサハ・ドゥブザとドラーの息子フェルジャルグとシドガルのガウァンと共にあったならば、エリンの四大地方は我らを屈服させることなどできなかっただろうから。」
そして彼はこのように話すように詩を詠んだ。

    戦士たちよ、戦え
    メイヴが翌朝仕掛けてくる。
    彼女は彼女の盾をお前たちの城壁に立てるだろう。
    彼女はお前たちの王の砦を破壊するだろう。

    冠を戴く王、偉大なる支配者、
    ドナルド・ドゥアルブゼの息子、
    我らは武勇の手柄のためにはあまりに数が少なすぎます、
    三は百人の勇士に満たない

    お前たちが百人に満たぬ三ならば、
    お前たちは皆で死ぬだろう、私の想像では。
    勇ましく戦う者は死ぬことはない。
    戦え、お前たちの王を守るのだ。

    百人の勇士のための見放された望み
    ガレーインとウラズの戦士たち、
    メイヴと無慈悲なルガズ、
    アリルとフェルグス、強大な者たち。

    人の為せることを我らは為します、
    年若いアリル、上級王よ、
    エリンの四大地方に分けられた攻撃は、
    あなたに打ち勝つことはないでしょう。

    ドナルド様は英雄的に突進して来るでしょう、
    彼は戦を成し遂げ、突撃を先導するでしょう。
    わたしの喉元に死が突き付けられたとしても、もっと悲しいのです
    偉大な主君が陥るであろう窮地のほうが。

    私がフロイフとフェルディアといたならば、
    そして獰猛なドゥブサハ・ドゥブガと、
    そしてドラーの息子フェルジャルグ、私と共に戦うために、
    私たちは我らの前を無人の野の如くしたであろう。

    私が残虐な目にあっていたならば、
    そして兵に等しい数と槍で、
    メイヴの兵たちは膨大であるけれど、
    彼女の戦士たちはここに(終の)棲家を見つけるのだ。

    私はメイヴの敵対によって見放されてしまった
    真に勇ましいガウァンラズから。
    私は彼女の戦士の誰も見放さない
    武勇を持ち合わせている者は。

    戦士たちよ。

この詩が詠まれたあと、酒も楽しみも魂の高揚もなく、夜は意気消沈するかのように更けていった。彼の部下はアリルに彼の手の内からフェルグスを逃すのを許したことを苦々しくとがめた。
朝日がこのような会話をした彼らを見ていたのだ。それから彼らは素早く敢然と起き上がり、全ての屈強な男は武器と甲冑を身に着けた。そして彼らは彼らの上級王アリル・フィンの周りに円陣を組んだ。そしてアリルは彼らに話しかけ、このように言った。
「私が知る確かなことだが」と彼は言った。「エリンの者どもはこの日私たちの城壁を乗り越えてくる。ガウァンラズが私たちを見放したことを考慮すると我らの数がこの場を守るのに十分ではないから。」
彼はそれから自分の浅慮とフリダスの裏切りを思い起こして付け加えた。
「もはやこれまでだ、幸運にも見放されていたと認めよう。」彼はそれから彼の息子たちや大勢の家臣たちに勇ましく戦って逃れるように促した。
「城門を開けよ。」と彼は言った。「私に続け、私がお前たちの前に道を切り拓く。この戦いに勝てるならお前たちの誰も帰ってくるな、私はお前たちを守り切れないだろうから。私は確実にこの日のエリンの者どもの関心の主な標的だ。しかし、私の信頼する者たちよ、もし私が粘り強く支えられ、フェルグスの部下や決闘を避けうるなら、私は家令のケルタンに使者を送っており、この砦から南東にあるケルタンの浜の人目につかないところへ私の船を持ってきて窮地にいる私に会うように指示している。これはいまケルタンの隅の半島の浜辺と言われている。」
アリルがこのように下知を終えると、彼は彼の家臣に素早く向こう見ずに立ち上がり、そして勇気を振り絞って急ぎ、足早に自信をもって門へ殺到し、そして扉の重要さなど踏みにじって、首を――に曲げて、危急に臨んで精神を高揚させ、剣を(敵の)体に振り下ろし、戦いの盾に向けて槍を破裂させ、膨大な兵に手短に懺悔の時を与えるように命令した。そしてその通りだった。アリルの家臣たちは彼らの主君の差し迫った命令に対して忠実に素早く立ち上がった。そして彼らは幅が広く、分厚い横木の燃え盛る柵とアリルの周りに彼を守るため恐ろしくぞっとするような鋭い武器を連ねた密集陣形を作った。彼らのなりゆきはこの通りであった。

メイヴとアリルとエリンの者どもの動向をさて、語ろう。フェルグスが彼らに加わり、ガウァンラズたちが彼らに敵対することもアリルを支援することもしないだろうと使者たちから知ると、彼らはアリルとメイヴの天幕に行って相談をした。これらがそこに出かけた高位の貴族と首領たちである。ロイの息子フェルグス、コルマク・コンロンガスと全てのドゥブロンガスの首領たち。そしてマネたちとケフトの息子マガハの息子とガレーイン族のダール・ドルスネたち、とタジィウの部族。クーロイの息子ルガズとノシュの息子ルガズ、そしてフェヴィスの息子ローホとルフタの息子フィンゲンの息子エオガンフィンとメスゲズラの息子アンガスとロスの息子フィンの息子マクニアと全てのエリンの高位の貴族たち。そして彼らは言葉通り、城壁を破壊し、頑丈な天守を打ち壊し、砦を更地にしてアリルと彼の家臣を殺すと結論した。そして同じ血筋の王に占領させ、あるいはガウァンラズの者に再建させることも決して許さなかった。そしてフリダスと彼女の牛たち、マイル・フリダスと彼女の家畜の群れを連れ去ることも。この決定にたじろぐコノート人が大勢いたけれど、彼らはメイヴの傲慢な言葉に反対することはできなかった。

それからロイの息子フェルグスは彼の兵団と立ち上がり諸州にも立ち上がるよう迫った。彼はコノート人に特に厳しく迫った。そして彼はその中で皆が死ぬかあるいは彼と彼の勇士たちが攻撃で命を落とすまでその場を去らないと誓った。それから諸州に素早く向こう見ずに大胆に砦に攻撃をしかけてそれを破壊するよう迫った。
これらの大規模で恐ろしい一団と、分厚くとても高い茶色の戦旗の森とこれらの荒れ狂う戦闘部隊の赤い柄の鋭い切っ先の(槍)と、屈強で厳格で荒々しい言葉遣いの戦友たちをアリル・フィンが見かけた時に彼はかれらと戦うと固く決意した。荒れ狂い、彼の怒りが湧きおこって彼の頬はすっかり紫の形相となり、彼は彼の家臣と家族を促した。彼は怨みや傷を心に刻んだ。彼は勇士たちと戦士たちを取り囲み、城塞と屈強な要塞の周りに輪を作った。彼は軍と群衆を粉砕した。彼は若い戦士と高位の勇士を潰走させた。彼は芝地や中庭にいる者たちを混乱の真っただ中にに投げ込み、彼らを(薄い)層や嵩張った集団にして、散り散りしたりかたまりに分け、そのため彼らは引き裂かれてくたびれ切って散り散りになり、その(虐殺の)後にみすぼらしく酷い有様でその緑地に残された者は助けもなく脇腹を刺され斧で斬られ殺され乱れた服装でおぞましく傷だらけな――群衆だった。(一方で)その同胞の部隊は散り散りになり分断されたので攻撃に参加した彼らのうちの六人ほど、突撃では五人、協議では四人、ある場所では三人だけ、それでも分断されなかった二人ほども生き残れなかった。死の密集陣形は兵を取り囲んだ。彼らの戦力は打ち砕かれ、アリルと彼の息子たちを除いてその虐殺で死んだのだった。

彼自身についてだが、彼の死に至るほどの強打は熊との戦いのようであり、彼の攻撃は猟犬たちを破壊し、彼の力強い突撃は人ごみを細切れにし、彼の突進はまるで鷲に死肉を餌に与えるようであり、彼の攻撃は貴族たちに対する勝利を予感させた。彼は力強く獰猛で高らかに敵に向かって七度の突進をして、そしてどの地方(の軍)からも七百人の勇士が彼と彼の息子たちと戦って死んだ。それからアリルは丘の四方を見渡し、どこを見ても彼は(味方の)戦闘部隊や小隊、あるいは戦う一団でさえ見当たらず彼を攻撃しようとする者ばかりであった。そして彼は彼の家臣たちが殺され、一族は破滅し、友人たちは皆が命を落としたことを悟った。彼はその後にその場を放棄することを決意した。なぜならその夜にトゥルスガルの人目につかない場所の半島の隅に彼の船が彼の必要に応じて合流するために回漕されてくるように前もって決めてあったからだった。そして彼はそこでケルタンに待つように指示していたのだ、もしも彼のその友が彼に合流するつもりならば。

さてフェルグスはほとんど勇士も首領も伴わずにいて彼の部族や一族から見放されたようなこの苦境にあるアリルを見つけると、戦士たちの隊列と膨大な兵たちに取り囲まれながらも誰も敢えて攻撃しようとしないのは彼の名声と武技と憤怒と力のためで、彼の恐ろしい形相がかきたてる恐怖のために死んでしまうだろうと、彼を周りに吠えかかる狼の群れとアフリカの気高い獅子になぞらえた。

アリルは盾の上に頭を出して王の兵士たちを睥睨した。彼は命を落としていない彼の部下の者を見かけなかった。彼は斬り倒される時であっても彼の部下の勝ち誇る叫びを聞いており、彼は彼らを助けることができなかったと痛ましく感じた。彼は急いで剣を鞘におさめ、盾をまっすぐに背負って、投擲武器を右手に掴み、西へ向いた。

全軍は彼を追跡した。フェルグスは激しくドゥブロンガスを促した。戦士たちと軍の先鋒は素早く彼に追いついた。しかし誰も彼に迫ろうとも攻撃しようともしなかった。彼は足止めしようとする者それぞれを傷つけ、あるいは殺すために薙ぎ払った。それから彼は自分の道を進んだ。このようにアリルは武技と武勇の強さに頼って自らの道を行き、とうとう今はケルタンの隅の半島と呼ばれているトゥルスガルの人目につかない場所に到着した。そこでフェルグスが彼に追いついた。ケルタンがアリルと、追跡しているエリンの者どもが彼に近づいてきているのを見て彼は岸辺から船を戻した。他に、(ケルタンが)船を使わせなかったのは彼の妻が以前彼にたぶらかされたことでアリルを憎んでいたからだという者もいる。

フェルグスとエリンの者どもの貴族たちについて。彼らはトゥルスガルの人目につかない場所に到着した。アリル・フィンに対しても敬意を。彼は彼の召使いが彼の船を奪ったのを見ると、彼はエリンの者どもに向き合った。そしてフェルグスは彼に話しかけた。
「そなたの言葉を不都合なものにしたな、アリルよ。」とフェルグスは言った。「そしてお前は遠くまで逃げた。わしとの決闘をが今待ち受けている。」そしてこのように言う間に、彼は以下のように話しかけた。

    お前に戦いの場が待ち受けているのか、
    エルガの西の土地の王よ。
    剣の死闘を繰り広げようではないか。
    獰猛な剣で盾を割ろうではないか。
    白の戦車の浅瀬でのお前の古臭いお喋りの力を思い出せ、
    お前は、強い男よ、お前の言葉を裏切らないだろう。
    お前が逃げてきた場所をよく選んだ。
    お前はガレーインの貴族に獰猛に攻撃し、
    お前は大勢のマンスター人を殺した。
    メイヴの軍勢の多くを破滅させた。
    お前は輝かしいロイの一族に勝ち誇った、
    まばゆいばかりの戦いの日から。
    勇ましい言葉をお前の脅し文句にしていた。
    お前はわしを斬首することを請け合った。
    この野原には大勢の証人がいる。
    わしは殺しにくい勇士だ。
    来い、そしてぐずぐずするなよ。
    お前は待っているのか?

アリルは慎重に慎重に、厳しく、暴力的に、執念深く、怒り、容赦なく、悪意のある言葉を返した。そして彼がそうしている間にこれらの言葉を言ったのだった。

    私は貴様を待ち受けるだろう、攻める王よ
(英訳ではroyal hirelingだがrigh amaisなのでアリルが受け手であることも考慮し攻める王とした)
    公平な戦いをかなえたまえ。
    各々自らの支援者を抑えさせよう。
    私たちは代り代わりに激しい斬り合いをしようではないか。
    私にはドゥブロンガスを制止することはできない。
    その勇士たちの約束は破られる。
    ルズリゲの荒波よ。
    トゥルスガルの波は私の化身。
    戦士としての私の戦いは滅多に見れるものではないぞ。
    私は戦いを続け、
    貴様の矜持を塵の中に埋めてやる。
    貴様の戦歴は終わりに近づいた。長らく貴様はバンバ中の悩みの種だった。
    地方の王としてのみじめな貴様の名声、
    強大な王としての貴様の不行状、
    マハの丘のエウィンの飲んだくれ野郎め。
    歓待を受けての亡命に部族を引き連れて放浪している。
    犬の群れを餌付けする者め。
    立派な宿に安眠を貪る。
    メイヴと姦淫するために逗留している。
    戯れの残り物。
    女王、淑女、女のお気に入り。
  
    待ち受けているぞ。

それから二本の不動の柱にして、二頭の不屈の熊にして、二本の不朽の樫にして、二匹の猛々しい山猫にして、二本の輝かしく大きく広がり満開の花をつけた古木にして、エリンの木々の中でもかつてないほど偉大な二本のイチイの木であるアリル・フィンとロイの息子フェルグスは行動を起こした。それからフェルグスはガウァンラズの手の内で一から全部の耐えねばならなかった彼の怨みや不名誉やすべての侮辱を思い起こした。二人の闘士はそれから剣を掴み、長い間互いに獰猛に攻撃し合い、ずっとそうしていた。どんな時でさえ容易に二人を見分けることも、あるいは視認もできなくなるほど彼らは猛烈に害して敵意をもって攻撃を激しく打ち込んでいた。

だが、なにかがあった。アリルはフェルグスの迅速で力強く荒れ狂う破滅の一撃によって倒れた。フェルグスはその場で彼の首を刎ねた。それに加え、彼の四人と二十人の息子たちと七百人の彼の家臣たち、マガハの息子ケットの息子ガルブとエリスの七人のエオハズたちと、ブレフネの七人のブレスレンたちとバグナのアンガスと五十人のドウナン族、そして彼らと共に名を残さなかったその他大勢の者たちもまた城や浜辺で彼を守って彼と共に死んでいた。なぜならエリンの四大地方の軍事力は彼らよりも強大だったからだ。

フェルグスはそれからモルガンの砦にアリル・フィンの首級を持って行った。そしてこのように、彼はメイヴとアリルの一団の中にいるフリダスと彼女の侍女たちに芝地でまみえた。そしてフェルグスはアリル・フィンの首級をフリダスの前の地面に置くよう命令した。それから彼は彼女に求婚して、彼女に言った。
「そなたへのわしの愛の証だ、女王よ」と彼は言った。
(フリダスは贈り物に)全く喜ばなかった。なぜなら彼女が以前ロスの息子(フェルグスのこと)を愛していたけれど、彼女は今や後悔して、彼女のために殺されたとわかり心変わりしたからだった。そしてフリダスと彼女の美しい従者はアリルを大声で哀悼し、彼の良き資質を広言し、善良さ、あらゆることへの権利や諸々について述べた。フリダスは死化粧をその首級に施すよう彼女の侍女に命令して、言った。

    お前たち、王の首級に死化粧を、
    多くの戦利品を取ったアリルに。
    孤を描く一閃が見舞われなかった、
    アリルの首と同等の首級に。
(上二行。英訳では、「星々は見下ろさなかった、アリルの首と同等の首級を」。文中のrennaをrindを解釈しているようだ。これを英訳では星(きらめき)の意味とするが、鋭い一撃の意味[eDILより]とすれば斬首の描写であると理解でき、場面にも沿った解釈なので変更した)

    わたくしはドナルドの息子の証言を与えます、
    彼の首は斬られてしまったけれど。
    もしも彼の権力だけでも残っていたのなら、
    彼はエリンで最も価値のある人だった。

    わたくしはドナルドの息子について証明します、
    彼の首は斬られてしまったけれど。
    彼はそれより少ない人数を抱えていなかった、
    彼と飲み飽かす二千人よりも。

    わたくしはドナルドの息子について証明します、
    彼の首は斬られてしまったけれど。
    彼のあとにクルアハンは決して迎えないでしょう、
    彼と同等の王や名声(を持つ者)を

    わたくしはドナルドの息子について証明します、
    彼の首は斬られてしまったけれど。
    戦いにおいて盾を掲げる、
    仇敵に対して(彼)より勇敢な英雄はいなかった、

    これは真実の証言です、
    彼が王位に就いた最初の日から、
    彼は誰にも食事や衣服を惜しまなかった。
    彼は決して誰にも侮辱を与えなかった。

    ブリクリウのしたことは悪いことです。
    エリスの最高の戦士は首がない、
    彼の体から切り離されていたをの見て、
    わたくしたちはそれを相応しく飾るでしょう。

    相応しく飾りなさい、甘美な乙女たちよ、
    この首はかつてアリルだったものです、
    あなたたちは英雄の喜びを分かちなさい。
    あなたがたが飾るべきことが相応しいのです。

    飾りなさい。

この詩のあとにアリル・フィンの首級は似つかわしく飾られ、フリダスはアリル・フィンの遺骸とともに高位詩人と賢者を葬らせた。そして墓が彼らのためにその同じ場所に掘られたのである。